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丸善プラネット |
「テキスト 哲学」(宇都宮芳明:丸善プラネット)、その名の通り、大学の一般教育用の哲学の教科書だ。古代ギリシャの思想家から始まり、現代哲学に至るまでの流れを概論的に示したものである。概論だから、そう深いところまでは解説されず、色々な思想家の思想のエッセンスが陳列されているので、教科書的に誰がどのような考えを提唱したのかを知るのには役立つだろう。
しかし、本書に示されているのは、西洋における哲学の流れだけで、いわゆる東洋哲学については触れられていない。もちろんこれは哲学というものをどう定義するかにもよる。例えば、ハイデガー研究の第一人者である木田元さんは、「哲学」とは、西洋と言う文化圏に特有の不自然なものの考え方で、本来何の役にもたたないものだと述べている。この定義だと、確かに東洋哲学というものはあり得ない。しかし、梅原猛さんのように、東洋哲学を重視している立場からだとかなり異論があるだろう。
それにしても、この手の本だと、どうして哲学は、いつもいつも古代ギリシャから始まるのだろう。今さらカビの生えたような古代の思想家の言説など、正直何の役に立つのか分からない。まあ、東洋でも、論語やお経をありがたがるので、人間の思考は、何世紀を経ても、そう進歩がないということなのだろう。しかし、現代哲学にしても、かってソーカルが皮肉ったように、わざと仲間内だけ(もしかすると自分だけ)しか通用しない言葉や概念を使って、自己満足にふけっているのも多いのではないかと思う。
少々話が脱線したが、本書では、先に述べたように、東洋思想についてはまったく触れられていないし、「構造主義」や、ニュートン力学以来の力学的世界観、これに対するマッハの批判、時空の概念を変えたアインシュタインの「相対性理論」などについてもまったく触れられていない。紙数の関係があるのなら、いっそ、古い時代のものを削って、現代に近い方に重点を置いたらどうだろう。
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