文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:The 21 2014年7月号

2014-06-17 19:48:16 | 書評:その他
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 07月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
PHP研究所


 「The 21」(PHP研究所)の2014年7月号。

 最近は、あまりこのようなビジネスマンの自己啓発雑誌の類は買わなくなった。久しぶりに買ってみたのは、出張の際の夜の徒然を紛らわすために、あらかじめ鞄に入れておいた本を全部読んでしまったからだ。何しろアルコールを飲まない私にとって、夜の読書は至福の時間である。

 しかし、最近は書店がなかなか見つからなくなった。しかたなしにコンビニで何か読むものを探そうとすると、普通の書籍は置かれていても種類が限られているので、どうしても雑誌ということになってしまう。

 ところで、自己啓発系の雑誌といってもいくつかの種類があるのだが、これを選んだ理由は、表紙の<「地頭力」の鍛え方>という言葉に魅かれたからだ。いくらお勉強をしても、今のように変動の激しい時代には、覚えた知識などすぐ陳腐化してしまう。必要なのは知識ではない。大切なのは、どんな状況になっても、柔軟に対処ができる「地頭力」なのである。

 この雑誌には、色々な分野で活躍している人たちが、「地頭力」の鍛え方について、各自の見解や、「地頭力」を鍛えるためのトレーニングなどについて紹介されている。書かれていることはそう異論はないが(つまりそう目新しくもないが)、あまり「地頭」を伸ばすということを考えてこなかった人には参考になるものと思う。

 気なることが少々ある。ひとつは、「古典で先人の思考のプロセスを追体験する」ということを言っている人がいたこと。確かに、読みにくい古典を一生懸命読み説いていくことは、かなりの頭の負荷になることは確かだ。いかにも、この手の雑誌で好まれそうな意見だが、私は別に古典でなくても、現代の良書をじっくりと読めば良いと思う。古典は、時代の壁があり、言葉ひとつにしても、本筋以外の部分で手間取ってしまう。ましてや、翻訳ものなど、そこに訳者のフィルターがかかってくるので、一層読みにくくなっているものもある。

 古典が好きな人なら、古典を読めば良いが、現代の書にもすばらしいものはたくさんあるだろう。そういったものを発掘しないで、単に評価が定まっているだけで古典を読めというのは、そこで思考を放棄しているも同然ではないか。それは、「地頭力」を鍛えるというテーマに照らしてどうなのだろう。

 本を読むというのは、なにも著者の考えをありがたく拝聴するというのが目的ではない。書かれていることをネタに、自分の頭でその先を考えることが必要だ。しかし、その目的のために、現代とまったく社会システムの違う時代に書かれた古典が役にたつかどうかは疑問である。

もうひとつ、「地頭が良い人の典型がアインシュタインです。アインシュタインは、従来のニュートン力学のセオリーと実測数値が微妙にずれていることを発見しました」と書いている人がいる。彼が時空の概念を根本的に変えたのは間違いないが、実験家ではないのだから、そんなことを発見したということは聞いたことがない。まあ、同じ筆者の、「一生懸命覚えたいくつかのセオリーが思考の”型”になってしまって、事実を無理やりその型にはめてしか解釈できない。マクロ経済学の世界にたくさんいらっしゃいますが・・・」という部分は同感なのだが。

☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時投稿です。

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