![]() | 宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト (ブルーバックス) |
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講談社 |
宇宙の彼方から、突然強いガンマ線が、短時間だけ飛んで来る現象のことを「ガンマ線バースト」と呼ぶ。ガンマ線バースト自体は、1967年頃には、発見されていたが、その原因が分かったのは、1997年になってからというから、まさに宇宙論のホットな話題のひとつである。本書、「宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト」(村上敏夫:ブルーバックス)は、このガンマ線バーストについて、発見から解明までの歩み、メカニズムなどについて、分かりやすく解説した啓蒙書である。
発見が遅かったのには訳がある。ガンマ線というのは放射線の一種で、エネルギーが高いために、大気に入ると、大気中の成分と反応してしまい、なかなか地表まで届かない。そのため、人工衛星が打ち上げられるようになるまでは、このような現象があることに気付かなかったのである。
それでは、いったいどのような天体がガンマ線バーストの発生源なのか。当初その候補にあがったのは、中性子星である。しかし、それでは、ガンマ線バーストの膨大なエネルギーを、説明できない。更には、ガンマ線バーストにもいいくつかの種類があることも分かった。当初は、「古典的ガンマ線バースト」と「軟ガンマ線リピーター」の2種類に分けられたが、最終的には、軟ガンマ線リピーターは、ガンマ線バーストではないとされた。しかし、こんどは、古典的ガンマ線バーストには、継続時間が長短の2種類があることが分かったのだ。前者は、巨大星の重力崩壊による極超新星の爆発(ハイパーノバ)が原因で、後者は連星の中性子星が合体するときの爆発により発生するという。しかし、この他にも別のタイプのガンマ線バーストがあるらしく、まだまだ謎の多い現象である。
ところで、本書には、いくつか教訓的なことが見受けられる。まず、ガンマ線というのは透過力が強く観測しにくいので、ガンマ線バーストといっしょに発生する「X線残光」というものに目をつけたというところだ。もうひとつは、長いガンマ線バーストを説明する理論を、この道の専門家ではない、マーチン・リース卿が相対論を駆使して構築したことである。発想の転換ということがいかに大切であるかを示す良い例ではないだろうか。
本書は、ガンマ線バーストのメカニズムが解き明かされていく歴史が生き生きと描かれ、ヘタなミステリーよりずっと面白い。また、ガンマ線バーストという、まだ一般的には馴染みのない、宇宙物理学の最先端の現象がテーマというのも、読者の知的好奇心を刺激してくれるだろう。
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