文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:全員で稼ぐ組織

2014-06-16 18:07:45 | 書評:ビジネス
全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書
クリエーター情報なし
日経BP社


 アメーバ―経営とは、現京セラ名誉会長である稲盛和夫氏が考案した経営手法だ。大雑把に言えば、社員を5~6名の小グループに分割し、その単位で自律的に採算を最大化させていくというものである。本書「全員で稼ぐ組織」(森田直行:日経BP社)は、その有効性と適用事例を紹介したものだ。

 著者の森田氏は、元京セラの副会長で、稲盛和夫氏と共に、JAL再建に尽力した人だ。本書では、まずアメーバ―経営について説明し、その適用例として、JAL、メーカー、病院、介護業界、中国での事例が取り上げられている。それらの事例は、企業経営の手法として参考になるだろう。

 ただ、本書では、「アメーバ―経営」と「部門別採算制度」をほぼ同義語で使っている。だから、「アメーバ―」の利点を説明しようとしていたのが、いつの間にか「部門別採算制度」の話に変わって分かりにくい。確かに「アメーバ―」は「部門別採算制度」のための手段であるかもしれない。しかし、「アメーバ―」以外の方法でも、「部門別採算制度」を取ることは可能なのである。

 また、アメーバ―も部門別収支管理も経営目的を達成するためのひとつの手段であり、決して目的ではない。だから、何のために、アメーバ―を導入するのかという目的を明確にすることが大切だ。それは、抽象的なお経のようなものではいけない。利益があがれば、それが社員にも還元されるという明確なメッセージも必要だろう。

 もうひとつ、この方法は、生産性を上がればあげるほど売れると言うのが前提だろう。しかし、いくらアメーバ―単位で生産性をあげたとしても、そもそもの受注がなければ、手空き時間が増えるか、在庫が積み上がってしまうだけになるのではないか。

 万病に効く薬などはないのである。要は、自分の会社に上手く適合するような手段を使うということなのだろう。アメーバ―もその候補の一つではある。

☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。



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