文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

崇徳院を追いかけて

2017-06-04 19:23:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
崇徳院を追いかけて (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・鯨統一郎

 この作品は、歴史学者で超美人の早乙女静香とライターの宮田六郎が、寂びれたバー・スリーバレーで、歴史の謎を巡ってバトルを繰り広げるシリーズの一つではあるが、今回はスリーバレーを飛び出して京都が舞台となっている。

 ひょんなことから二人で京都へ行くことになった、静香と六郎だが、天敵ともいえる二人のこと。喧嘩をして途中で六郎が新幹線を降りてしまうわ、京都では殺人事件に巻き込まれるわで散々な目にあう。おまけにホテルの手違いで、二人は同じ一つの部屋に。ただし、静香が寝るのはベッドで六郎はソファという扱いなのだが。

 タイトルにある崇徳院とは、日本最大の怨霊と恐れられた崇徳上皇のことである。西行は、そんな崇徳院に心を寄せていたという。二人が京都で解き明かすのは、殺人事件の謎だけでなく、西行を信仰しているというカルト教団の正体、そして歴史を超えて、崇徳院の呪いの真相である。

 この話は、刊行されたのは2016年ではあるが、シリーズの時系列としては、第2弾の「新・世界の七不思議」と第3弾の「新・日本の七不思議」の間の話となるようだ。「新・日本の七不思議」では、あれほど犬猿の仲だった二人がいやに仲良くなっていたが、この巻ではその理由が分かる。

 つまりはツンツン一辺倒だと思われた静香が、実はかなりのツンデレで、事件の解決を通じて、ツンからデレへの相転移を起こしてしまったということなのである。果たして、次回作はあるのか。静香はどのようにデレキャラデレぶりを発揮していくのか、ちょっと気になってしまう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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