![]() | 心とからだ―どうしたら自分をコントロールできるか (ブルーバックス 353) |
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講談社 |
・石川 中
少し古い本(S55年(1980)第3刷)だが、実家の本棚の隅にあって、持っていることを完全に忘れていたものを引っ張り出してきた。著者は心身医療の専門家で、東大心療内科の科長などを務められていた。ネットで調べると、既に1986年に亡くなられているようだ。タイトルから想像できるように、人間の体の状態は、心の状態と大きく関係しているという。
心の状態が体の状態として現れるものを心身症と呼ぶ。その定義は、「身体症状を主とするが、その診断と治療に心理面からの配慮を特に必要とする病態」(p54)ということだ。本書には心身症とはどういうものかということとその治療法について解説されている。
著者が強調するのは、自分で自分をコントロールすること。すなわちセルフコントロールの重要性である。アメリカの有名な数学者にノバート・ウィーナーという人がいる。彼は、サイバネティックスという考え方を提唱した人だ。サイバネティクスとは、いろいろなシステムを統一的に扱おうとする考え方で、その胆は、フィードバックと自動制御ということにある。著者はこのサイバネティックスの考え方を心身医療に適用して、サイバネーション療法というものを提唱している。
サイバネーション療法とは、セルフコントロールを中心にした療法だ。その原理は、「ブラックボックス原理」、「開放系の原理」、「フィードバックの原理」、「情報とエネルギーの原理」の4つ。本書はそれぞれについて、章を割いて説明している。若干古く、古書でしか手に入らないようだが、ストレス解消のため自分をコントロールしていきたい人には多くのヒントが詰まっているように思う。
ところで、実はウィーナーのサイバネティクスの方も、学生時代に買ったまま、ずっと本棚の肥やしになっている状態だ。私が持っているのは、岩波から出ていた、昔ながらの箱入りハードカバーだが、今は岩波文庫にもなっている。そのうち読んでみたいと思うのだが、果たしていつのことになるか。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。