文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:オフィスハック

2018-09-27 00:45:19 | 書評:小説(その他)
オフィスハック
クリエーター情報なし
幻冬舎

・本兌有、 杉ライカ 、(イラスト) オノ・ナツメ

 この作品を一言で言えば、会社の邪魔になるやつは消してしまえというもの。要するに会社を私物化するようなやつは粛清するのである。

 主人公は、香田大介という男。所属は合併続きで肥大化したT社の第四IT事業部第七ソリューション課、通称四七ソ。第一人事部の実行部隊として、銃を片手に悪い奴らをぶっ殺す。タイトルのオフィスハックというのは四七ソの課員の持つ特殊能力。

 香田の力はテイルゲート。気配を一定時間消すというものだ。すなわち一定時間ものすごく影が薄くなるのである。この他にもショルダーサーフ(後ろからチラ見しただけで見た内容を完全に記憶する能力)やダンプスター・ダイブ(どんなに細切れにされた書類でも復元できる)というものがある。

 とんでもなくありえないような設定だが、法律よりは社内の都合を先にしがちな日本の会社を皮肉っているような気もする。次のセリフは香田が元々働いていた部署の部長のセリフ。
<「法律とか社会常識なんて守ってたら、会社は立ち行かないんだよ。法律とか、あんなのは、建前にすぎないんだよ。お前の見てるこれが、現実」>(p15)

 まあ、実際にここまで口に出す人間は珍しいだろうが、実際には労働法違反や独禁法違反などの例は掃いて捨てるほどある。会社が人間から成り立っている以上、中には部下に滅私奉公を求める上司が出てくるのは避けられない。立場が上になると、勘違いして自分が規則だと思ってしまうのだ。コンプライアンスなんて言葉を使いだしたのも、守っていない会社が多いからだろう。

 これは香田が社内の悪人たちを粛清するときのこと。
<おれたちは全方位のコンプライアンスに配慮しながら…(以下略)>(p123)
 いや、やってることは完全にコンプライアンス超えちゃってますから(笑)。

 ライバルとして第二人事部の実行部隊の第五IT事業部第六システム運用課(通常五六シス)なんてのも出てくる。いや四七ソも五六シスのどちらもIT関係ないと思うぞ。それに部が違うのになんで人事部の実行部隊やっているんだ。この会社も日本の会社によくあるように人事部門が優位なのか。でもこんなおバカな設定の作品は意外と好きである。

☆☆☆☆

コメント
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