![]() | 三十一文字のパレット (中公文庫 (た54-1)) |
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中央公論新社 |
・俵万智
「サラダ記念日」で一世を風靡した俵万智によるエッセイ集。実家の本棚の隅にあった。ちょっと昔の本だが、昨年亡くなった父が退職後に短歌をやっていたので、参考に買ったのだろう。もともとは「中央公論」に、5年あまり連載したものを集めたもののようだ。その趣旨は、一つのテーマに沿って、毎月3首ほどの現代短歌を紹介するというものだが、厳密に3首に固定しているわけではない。
2首しか紹介していない回もあるし、同じ作者の歌を紹介する場合には3首を超えて紹介している場合もある。また、現代短歌といいながらも、与謝野晶子や若山牧水などが紹介されていたりもする。それにしても、たった三十一文字の世界の広いこと。歌詠みは、このわずかな文字数の中にいろいろな思いを込めて言葉を紡ぐ。
解説する方も、よくあの短い文字数にあのような解説を付けられるものだと感心する。私など不調法の極みのような人間なので、とてもそのような真似はできない。おそらくは自分なりのフレームワークがあり、それに照らして解釈しているのだろうと察する。だから100%作者の心とシンクロしているわけではないだろうが、作品は一度公表されるとその解釈は読み手にゆだねられるのだ。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。