![]() | 文字と組織の世界史:新しい「比較文明史」のスケッチ |
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山川出版社 |
・鈴木薫
本書は、世界史を五大文字世界という大きな括りで眺めたものだ。五大文字世界とは、ラテン文字世界、ギリシア・キリル文字世界、アラビア文字世界、梵字世界、漢字世界のとである。もう少し詳しく説明すると、ラテン文字とは通常のアルファベット、キリル文字とはロシア語などに使われるものだ。もちろんこれらの文字世界の範囲は時代によって異なっている。
タイトルから想像したのは、文字がどのように変遷してきたのかということ。確かに本文中には文字がどのように変遷していったのかに関する記述はある。しかし全体的に見ると高校の頃にあったような世界史なのだ。もっとも記述は高校の教科書よりはずっと詳細だ。だから読むのには結構時間がかかる。記されているレンジは紀元前から近現代のことまで。ただし、南北アメリカについては、あまり記述がない。これは、植民地とされたときに、先住民の文化とは断絶しているためだろう。
ただ〇〇文字と言葉で言われても、どんなものかよくわからない。できれば、例を示して欲しかったのだが。
気になったのは、副題にある「組織」という言葉。本書中に「目的達成のための協働のシステム」定義されているが、今一つ分かりにくい。「支配組織」や「宗教組織」のことだと思うが、明確に組織がどういう役割を果たしてきたのかはよく分からない。
最後に細かいことに触れるが、著者は、「優位」という際にいつも「比較優位」と言っている。元々「優位」とは比較する対象があっての言葉である。だから単に「優位」と書けば意味は通じるはずだ。著者は「比較優位」という単語が好きなようで、武力などが、相手より優れている場合に使われている。
実は「比較優位」というのは経済学における technical term で、国際間の貿易などを議論する際に使われる言葉なのである(意味は興味があるならググって欲しいが、単に相手より優位にあるということではない)。いつもいつも「比較優位」と言われると、どうも変な感じになってしまう。
☆☆☆