文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:噴煙姉妹

2018-12-06 10:22:54 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
噴煙姉妹
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・名梁和泉

 なんたってこのレトロな感じの表紙イラストが何とも言えない。
そういえば、昔の雑誌の表紙はこんな感じだったなあとしみじみ(笑)。

 主人公の丁田(旧姓・楚辺)鵜乃吉は、徴兵逃れのために、温泉旅館丁寿屋の婿養子として、美人女将である亜津子と結婚する。現在南米で戦争が起こっており、徴兵されれば南米に送られるという設定だ。亜津子は鵜乃吉の大学時代の同窓生だった。そして彼女には、美しい妹の真耶子(鵜乃吉にとっては義妹となる)がいる。この物語は大学に行っていた義妹が帰ってきたことから始まる。

 舞台は戦前の日本を模したような架空世界。襟州(きんしゅう)にある根倶市の温泉街。そこには鷹名湾に浮かぶ辛庚島(しんこじま)というM字型の火山があり、姉口、妹口の二つの噴火口を持っていた。そして、丁寿屋の姉妹の感情が高ぶるとその二つの噴火口から噴火すると信じられている。だから姉妹はこう呼ばれる。「噴煙姉妹」と。そして本格的に噴火すると世界的な災厄になってしまうのだ。

 作品に出てくる地名などからは北海道を連想するのだが、土地の特徴からは鹿児島あたりを連想してしまう。なにしろ冬に雪が降ることがめったにない場所らしいので、北海道よりは鹿児島に近いだろう。

 この温泉街にテロリストや密偵などが入り込んできたらしい。テロリストの目的は義妹の真耶子の感情を操作して、辛庚島を大噴火させること。果たして、鵜乃吉たちは、辛庚島の噴火を阻止できるのか?

 男女の愛あり、超自然現象あり、ちょっぴり薔薇ありといった感じで、なんだかよく分からないまま最後まで来てしまう。ただ、鵜乃吉に冷たいように見える亜津子の本心が明らかになって、それがちょっとしたどんでん返しのようになっているのは面白かった。タイトルもそうだが、なんだか不思議なテイストの作品だろう。

☆☆☆


コメント
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