文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方

2018-12-12 10:32:18 | 書評:ビジネス
余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方 (単行本)
クリエーター情報なし
集英社

・氏家健治

 本書は新宿御苑前でケンズカフェ東京というガトーショコラの専門店を経営している著者がこれまで行ってきた経営について纏めたものだ

 ケンズカフェ東京は、元々イタリアンレストランで著者はそのオーナーシェフだった。しかし利益は出ず、自分の貯金も使い果たし倒産寸前だったという。それが、余計なことをやめたことで、収益が大幅にアップしたという。

 それでは著者は何をやめたのか。まず夜の時間帯は宴会に特化して、予約が入らない時は営業をやめた。そして次第に、ガトーショコラに力点を移していった。最後は、ランチや喫茶、宴会をやめて、ガトーショコラ一本に絞ったのである。ネット通販もやっていたが、これもクレーマー対応など手間ばかりかかるのでやめてしまった。

 著者は、色々なことをやめていった結果、様々ないいことがあったという。例えば、一つの商品しか扱わないため、商品を磨き上げられるし、データ分析も容易、廃棄ロスや販売機会ロスをなくせる。製造工程がインプルになる。またネット販売をやめて高値で販売しているため、客筋が良くなったという。

 著者の戦略を一言で表せば、ガトーショコラに経営を特化するというものだろう。本書でも触れているが、マーケティングの4Pのうち3つのP、すなわちPlace(流通)、Product(商品)、Price(価格)を徹底的に絞ったものだ。そして最後に残っPであるPromotionn(宣伝)には徹底的に力を入れる。

 ただし、これは東京などの大都会でのみ成り立つ戦略だということは指摘しておきたい。例えば、地方の万事屋(よろずや:今でもあるのか?)のようなところで、一つの商品に特化したら客が怒り出すと思うし、まずそれだけで経営が成り立つだけの需要があるとは思えない。

 大都会のように他に必要なものを売る店がいくらでもあるようなところでは有効だろうが、どこででも成り立つわけではない。だから地方でうっかり真似をすると大失敗することだろう。ただ、それぞれが置かれている環境の中で、色々な戦略を考えることは有効だろうと思う。本書にはそのための知恵が詰まっているように思える。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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