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日本史を動かした歌 |
田中 章義 | |
毎日新聞出版 |
本書は、我が国の歴史上の偉人の歌を集めたものだ。神話時代から昭和・平成の歌人まで収録されているのはちょうど100首。見開き2ページで、歌と解説が書かれている。解説は主として作者についての紹介なのだが、よく読めば、その歌がどんな気持ちやシチュエーションで詠まれたのかが分かるだろう。
歴史上の偉人といっても知らない人も結構いるし、中にはこの人が歌を詠んでいるのかと思うような人も入っているのである。例えば、日本人初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹博士。博士が漢籍に堪能なのはよく知られた話だが、歌も詠まれているとは知らなかった。このような歌が収録されている。
素粒子の世界の謎を解きあぐみ 旅寝の夢も結びかねつつ
いかにも湯川博士らしい歌ではないか。
高杉晋作の歌も収められているが、帯には「高杉晋作は隠れ西行ファン?」とあったのだが、彼の歌の解説を読んでもそんなことは書かれていない。しかしご安心あれ。西行の歌も収められており、その解説に彼が西行に敬意を表して、「東行」と名乗っていたことが書かれている。ちなみに彼の墓所は下関市にあり、「東行庵」という名の史跡となっている。
また飯沼貞吉の歌も収められている。飯沼貞吉と言っても知らない人が多いだろうが、あの白虎隊のただ一人の生き残りである。彼の父の妹が会津藩家老の西郷頼母の妻だったという。西郷頼母の養子だったのが姿三四郎のモデルとなった西郷四郎である。だから、飯沼貞吉と姿三四郎は親戚ということになる。(ん?)
この貞吉を匿い、身の立つようにしたのが、実は敵方長州藩士の楢崎頼三なのであるが、このことが本書にまったく書かれていないのは、長州人としてとても残念である。
最後に、本書にも収録されているが、私の好きな歌を紹介して終わろう。
倭(やまと)は国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭し美(うるわ)し 倭建命(やまとたけるのみこと)
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