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時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1) |
ジョセフィン・テイ、(訳)小泉喜美子 | |
早川書房 |
このタイトルからSF作品を連想してしまいそうだが、実はこてこてのミステリーである。本作は、著者の遺作であり、ベッドディテクティブの嚆矢とも言える作品だ。
主人公はアラン・グラント。ロンドン警視庁の警部だ。犯人を追跡中にマンホールに落ちて骨折し、入院生活を送る羽目になってしまう。本作は、その入院生活の徒然を慰めようと、グラント警部が、歴史上のミステリーに挑戦するというものだ。
彼が挑むのは、イングランド王だったリチャード3世。甥2人を殺した極悪人として一般には語られるが、実は無実で、その素顔は全く違うということを色々な資料から証明しようとするのがこの作品の骨子である。
高木彬光は、この作品にインスパイアされて、「邪馬台国の秘密」や「成吉思汗の秘密」などを書いたと言われる。
Wikipediaによれば、このタイトルは、"Truth is daughter of time."から来ているという。日本語に直すと、「真実は時の娘」、要するに、このタイトルは、「真実」という意味である。
イギリス史をまったく知らなくても作品を楽しむことができるが、詳しい方が、一層楽しめると思う。私など〇〇△世と言われても誰だか全く分からない。一応系図はついているのだが、イギリス史を知らないと情報を読み取り難いと思う。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。