本書は、天久鷹央シリーズの第二弾となる。主人公は、天才的な診断能力を持つ女医天久鷹央だ。何しろ27歳にして、東京都東久留米市にある天医会総合病院の副院長兼統括診断部長なのだ。ただし父親がこの病院の理事長で、叔父の大鷲が院長なのだが、叔父とは敵対関係にある。
診断能力は天才的なのだが、人の感情や場の空気を読み取るのが大の苦手。そしてこれも天才的なくらい不器用である。だから部下の小鳥遊(たかなし)がついていないと患者の処置もできない。童顔で体も小さいことから、子供から「子供の先生」と呼ばれることもある。真鶴という美人の姉がおり(天医会総合病院の事務長をやっている)、鷹央のことをなにかと心配しているが、鷹央は姉のことが苦手なようだ。
敬語が使えないので、人からは傍若無人と思われているが、案外メンタルは弱く、仲の良い子供の患者の死で落ち込んだりする。
この巻に収録されているのは以下の3編。
〇甘い毒
事故を起こしたトラック運転手の香川は、コーラを飲んだ後意識が遠のいたので、何等かの毒物が入っていると主張するが、毒物は一切検出されなかった。
〇吸血鬼症候群
天医会総合病院の近くにある療養型の倉田病院で、輸血用の血液が盗まれるという事件が連続する。
〇天使の舞い降りる夜
小児科に入院している悪ガキ3人組が、退院を目前にしてそろって容態が急変する。彼らの容態が変わったのは、病棟に「天使」が現れるようになってからだという。
著者は現役の医師である。ミステリー仕立てなのだが、謎解きを行うにはかなりの医学知識がないと無理だろう。そういった意味で、著者が医師であるというアドバンテージをよく活かした作品だと思う。
☆☆☆☆☆