文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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学校や塾へ行かずに、いかにして4人の子どもたちは独学力を身につけたのか?

2023-06-12 09:40:57 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 

 本書は、京都大学文学部卒で大阪生まれで高校卒まで大阪で育った著者が京都府内唯一の村である南山城村の童仙房集落に移住し、4人の子育てを行った記録である。年齢や子供たちの性別は良く分からないが、たぶん学部は違えど大学では私の後輩になるのだろう。小中高は地元の公立(有名進学校ではない)に通ったというから、この辺りも私と同じだ。もっとも私の場合は田舎育ちなので殆ど選択肢がなかったのだが。だから少し親近感が湧く。

 子育ての一番の特徴は、ホームスクーリングということだろう。ホームスクーリングとは学校に通わず家で勉強することである。4人の子供の誰一人、小中高に通ったことがないという。現在まで第一子は三重大学に通っているとのことで第二子は、京大目指して勉強中のようだ。

 ここで一つ疑問がある。どうして子供さんは通信制大学に行かなかったのだろう。大学を通信制で済まして大学院に入る道もあったのだ。柳川範之さんのように高校は独学で大検を取り、大学は通信制、それでも東大教授になっている人もいるのだ。そうすれば浪人などと言う回り道はしなくても済んだと思う。そして残念なことに日本では同じ大学でも、大学院へ行く方が学部へ入るより楽なのだ。多分そういった考えが頭に浮かばなかったんだろう。

 著者が勧めているのは漢文の素読。昔の教養人は漢文の素読で鍛えられたというのだ。わが国のノーベル賞第一号の湯川秀樹さんが漢文素読をしていたのは有名な話だ。だが、元々優秀な人が漢文素読をしていた可能性もある。素読で学力が上がったかどうかは良く分からないのだ。多分素読をしていても、教養が身につかなかった人が圧倒的に多いのではないだろうか。もう一つ著者が勧めるのは小さいころの昔話の読み聞かせ。現代的にアレンジされて毒を抜いてあるのはだめだそうだ。実は昔話の毒は毒ではなく深遠な知であるというのだ。だから毒を抜くと、弊害の方が多くなるのである。

 独学力をつけるという考えには賛成だ。結局学問は独学力なのだ。人から何かを教えてもらうことが当然と思っているようなら、まず大成はしない。私自身、誰かに何かを教えてもらったという記憶がほとんどない。今は小さなころから塾に通って、なんでも教えてもらうという態度の子が増えている。日本の将来は大丈夫かと、ものすごく心配になってくる。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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