語学と気づきの心理学 | |
クリエーター情報なし | |
セルバ出版 |
・丘田悟
本書によれば、著者は学習の過程で、ふいに論理的な因果関係のない景色がふと頭に浮かぶことがあったという。例えばラーメン屋だったりレコード・ジャケットだったり昔のカルピスのラベルだったり。著者はこれを「ピンナップ現象」と名付けている。
これを強引にユングの心理学と結び付けて解き明かそうとしているのが本書の内容だが、私には単に著者の個人的体験に過ぎず、普遍的な現象ではないと思える。もちろん個人的体験である以上著者のいうことを否定する気はない。おそらく著者にはそのような体験があったのだろう。
しかし、私自身著者の言うような体験を一度もしたことがないし、周りでもそんなことを言っている人間は一人もいなかった(もっとも本人がひた隠しにしていた可能性は否定できないのだが)。これは著者のように学習に打ち込んでないからだと言われるかもしれないが、おそらく高校時代以降は著者よりずっと学習に打ち込んでいたという自負がある。おそらく私の学生時代の友人たちもそうだったのだろう。
禅の世界では「魔境」という言葉がある。修行・瞑想中に中途半端に悟ったと自覚するような状態だ。なんだか、本書を読んでみると、この言葉が唐突に頭に浮かんだ。
☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。