四谷怪談といえば、鶴屋南北の作品のうち有名なものの一つだろう。実は鶴屋南北というのは、歌舞伎狂言の作者で襲名するものだったようだ。だから5人の鶴屋南北がいるが、この南北は4代目。通常鶴屋南北と言えば、この4代目を指すらしい。
四谷怪談は、怪談物として有名だ。不誠実な夫・田宮伊衛門によって殺されたお岩さんが亡霊となって伊右衛門に祟りをなし、遂には田宮の家を亡ぼしてしまうというのが一般の人が知っている話だろう。そして、そんなお岩さんを祀ったのがお岩稲荷と言われている。
しかしこれには異説がある。下町派すなわち町人派の唱えるのは怪談なのだが、山の手派すなわち武家派によって唱えられていたのは一種の美談。この話においては、伊右衛門もお岩さんもハッピーエンドになっている。そしてお岩稲荷は、お岩さんが信心していたお稲荷さんで、この話を聞きつけて自分も拝ませて欲しいという人が増えた結果が今のお岩稲荷になったというものだ。
怪談か美談か。今となってはまず分からないが、どんな話にも真反対の説がある。自分の立場や物の見方などを反映していることが多い。くれぐれも片方の話だけを聞いて、それを鵜呑みにすることがないようにご用心、ご用心。
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