認知心理学 (放送大学教材) | |
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放送大学教育振興会 |
・高野陽太郎
認知心理学というのは、人間の心の働きを解明しようとする心理学の一分野である。人間は世界をあるがままに認知しているわけではない。世界を認知するまでの間に、解釈というものが入りそれに従って世界は認識される。
例えば、網膜に写る像は二次元である。なぜ三次元の像として私たちは認識するのか。一般に女性の声は高く、男性は低い。周波数などの物理的な特性は全く違っているのになぜ「あ」の音は、同じ「あ」の音として聞こえるのか。
こんな経験はないだろうか。自分が関心のある話題について、急に雑踏の中から聞こえてくる。関心のないものは、確かに見ているはずなのにまったく記憶にない。
これらはすべて「認知」という、人間の脳の不思議な働きからくるものだ。もちろん何事も、突き詰めていけばとても一冊の教科書には収まらないだろう。しかし本書を一読しておけば、「認知心理学」という分野の面白さの一旦なりとも認識できるものと思う。
※初出は、「風竜胆の書評」です。