本書は、「鬼棲む国出雲」から続く「古事記異聞シリーズ」の2冊目にあたる。主人公は橘樹雅(たちばなみやび)という日枝山王大学に通う女子学生。大学4年で某一流企業への就職を希望していたが、彼女の就職活動は全廃。新学期から大学院へ通うことになった。研究テーマは「出雲」。
興味があった水野史比古教授の主宰する民俗学研究室に所属することになっているが、肝心の水野教授は1年間のサバティカル・イヤーということで留守中。
この水野研究室の面々が変人だらけなのだ。教授の水野も変わっているといえばいえるのだが、准教授の御子神伶二と助教の波木祥子のコンビは雅の目からは最悪である。なにしろ御子神は見てくれはいいが、口を開けば棘だらけの言葉が飛び出すのである。波木の方は一日中資料に目を通していて、用事があって声をかけても。挨拶をしても完全に無視されてしまう。この二人、大学でこそ生きていけるが、普通の社会人にはなれないだろうなと思うのは私だけだろうか。
さて本書の内容だが前回出雲の神社を回った雅は、出雲に関する見識を深めるため、今回は奥出雲まで足を延ばしている。奥出雲というのはヤマタノオロチ伝説の舞台となった地である。
高田ミステリーの特徴は、古代の出来事と現代の事件がクロスオーバーしていることだろう。今回も雅は奥出雲で起きた事件に巻き込まれる。しかし他の作品にも言えることだが、こういう原因で殺人事件を起こすのならもう狂信者としか言いようがない。極めて特殊な人しか事件を起こすまでには行かないだろうと思うのだが。まあ事実は小説より奇なりというので、もしかしたら結構いるのかな。
☆☆☆