絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書) | |
クリエーター情報なし | |
筑摩書房 |
・小松貴
私が子供の頃は身の回りは昆虫たちであふれていた。本書中にも記載があるが、ミズスマシやタガメ、ゲンゴロウといったものは昔はよく見られたものだ。しかし今はよほどの田舎でも見ることができない。現に私の故郷もどんどん過疎化が進んでいるが、これらの昆虫にお目にかかることはなくなった。子供のころには、なんでもないような側溝にもドジョウやタガメ類などのいろいろな生き物を見つけることができたというのに。
大きな美しい昆虫は人目を引くので、保護しようという機運が高まる。しかし、大部分の絶滅危惧種は、体調がわずかに数ミリしかないという本当に地味な虫なのである。これでは一部の研究者を除くと、一般の人の関心はなかなか引かないのだろう。本書はこのような絶滅の危険がある小さな虫たちを扱ったものだ。もっとも小さいからこそ、移動距離が小さいため、実質的に孤島に生息しているのと同じような状態になり、独自の進化を遂げた結果、他には生息していない珍しい虫になってしまったということもあると思う。
例えば、アヤスジミゾドロムシやヨナクニウォレスブユなんて知っている人はほとんどいないだろう。本書に紹介されている虫たちについては、私自身も初めて聞いたようなものが多かった。
虫の種類というのはものすごく多い。だから、環境の変化に伴って、私たちが知らないうちに、ひっそりと滅んでいった虫たちも結構いるのではないかと思う。もちろんすべての虫を保護することは実際問題として不可能だ。せめて本書を読んで、そんな虫たちもいたことに思いをはせて欲しい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。