分断した世界 逆転するグローバリズムの行方 | |
クリエーター情報なし | |
集英社 |
・高城剛
本書によれば、現在は再び分断の時代を迎えたという。書かれているのは、持てる者と持たざる者の分断。そして、アメリカファーストやイギリスのEU離脱という国の分断。深刻化する移民問題。これと対応するように台頭する極右政党のことなど。
本書は前後編に分けられ、今回は前編に当たるという。時間のレンジとしては1989年から2019年まで。後編は今後30年後の再び一つになる世界が描かれるようだ。
しかし、ここにひとつ疑問がある。国の分断だが、世界から孤立して、果たしてやっていけるのだろうか。いま世界は好むと好まざるに関わらず、グローバル化が進んでいる。
アメリカのトランプ大統領は日本からの自動車や部品に対して、25%の関税をかけると息巻いているが、グローバルな部品調達が当たり前となっている現代で果たしてそれがうまくいくのかは疑問である。おまけに目新しいものは、たいてい特許で守られているのではないだろうか。
関税を大幅に上げれば、コストプッシュによるインフレを呼び、製品は古臭くなり、アメリカ経済を混乱させるだけの結果に終わるだけのような気がしないでもないのだが。
面白かったのは、トランプ旋風の原因は、よく言われているようにラストベルト(Rust Belt)の人々ではなく、本質はアメリカにおける「百姓一揆」であるという指摘だ。
この他にも興味深い話題が満載。実際の現場を見てきた著者による渾身のルポだろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。