文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:GOSICKs IV ゴシックエス・冬のサクリファイス

2018-06-19 10:24:57 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
GOSICKs IV ゴシックエス・冬のサクリファイス (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)

・桜庭一樹

 桜庭一樹のGOSICKシリーズの外伝に当たるGOSICKs (ゴシックエス)。本作はその最終巻に当たるものだ。舞台はヨーロッパの架空の小国ソヴェールの聖マルグリット学園。主人公は極東の島国からの留学生である九城一弥と謎に包まれた美少女ヴィクトリカ。描かれているのは、学園をあげてリビングチェスに興じる冬の1日の出来事。

 挿入されるのは、ヴィクトリカの思い出話。異母兄となるグレヴィールのあのドリルのような尖がったヘンな髪形、彼の部下であるイアンとエヴァンの二人がいつも手をつないでいること。その原因は全部ヴィクトリカにあったんだね(笑)。

 全編を通じて、どこかコミカルな雰囲気が感じ取れる。しかし、その反面、不安な空気も漂わせている。

 <たとえば、この学園に学ぶ貴族の子弟たちが一斉に家に呼び戻されているという事実。逆に、都会からとつぜんこの村にやってきた資産家の親子。そして、なぜかそわそわしながらわたしの様子を確認しにきた兄貴。つまりは嵐が近づいている近日中に、そう・・・・・・>(pp177-178)

 桜庭一樹の作品にはどこか異形を抱えた美少女が登場することが多い。このシリーズの主人公、灰色狼の末裔たるヴィクトリカは最高のキャラだろう。もっとも桜庭作品には時折ヘンな個所がある。本書でヘンと思ったのは、第一話「白の女王は君臨する」に出てきた鏡文字のトリック。後ろ向きに書いたために、ダイイングメッセージのpがqになった(p63)とのことだが、自分で実験してみるといい。絶対に鏡文字にはならないんじゃないかな。しかし、そんなヘンな部分も含めて、ヴィクトリカはとっても可愛らしいのだ。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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書評:静おばあちゃんにおまかせ

2018-06-17 11:00:04 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
静おばあちゃんにおまかせ (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋

・中山七里

 主人公の葛城公彦は、警視庁捜査一課の刑事だ。階級は巡査部長で、年齢は25歳。自分に自信がないが、隣県に移動した元上司の無実を晴らすために奔走するような、なかなかに熱いキャラである。

 本書で扱われるのは5つの難事件。上述の元上司にかかった冤罪事件、外国人労働者にかかった冤罪事件、密室殺人事件など。実は彼は、事件が発生すると、恋人で法律家を目指している高円寺円の知恵を借りるのだ。第一話では、二人はまだ恋人未満の関係だったのだが、第3話のあたりで、名実ともに恋人関係になった。

 しかし実際には、元高裁の裁判官だった円の祖母が事件を解決しているのである。なにしろ円から、事件の概要を聞いただけで、たちどころに解決するのだ。究極の安楽椅子探偵だろう。

 この連作短編集においては、葛城刑事と円のコンビが色々な難事件に挑むというエピソードが本書の横糸となるだろう。これとは別に、全体を通しての縦糸として、円から両親を奪った交通事故の真相の追求がある。

 両親が事故にあった際に、円は中学生でいっしょだった。その時、事故を起こした犯人から酒の匂いがしたのだが、裁判の過程ではアルコールは検出されなかった。第4話で円はその犯人と対面するのだが、彼女に記憶にある人物とはどうも違う。その謎を解くというのが全体を通してのテーマとなっている。

 最後に明らかになる円の祖母については驚き。最近は、あまり小説は読まないのだが、これは面白くて一気読みしてしまった。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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書評:シリーズ<本と日本史>(1) 『日本書紀』の呪縛

2018-06-15 09:40:10 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
『日本書紀』の呪縛 シリーズ<本と日本史>1 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社

・吉田一彦

<『日本書紀』は日本の過去をありのままに記したような書物ではない。それは、権力の座についた氏族たちが自分たちの権力の根拠と正当性を神話と歴史から述べた政治の書物であり、過去を支配することを目的とした書物であった。>
(p225)

 本書の主張は、「日本書紀」とは、極めて政治的な書物であるというものだ。この書物は、過去の支配、勝者が自らの正当性を主張するために編纂され、我々は、今なお、この呪縛に囚われているのではないかというのである。

 日本書記は、全30巻。神話の部分も含めて、戦前は金科玉条のように扱われていたが、戦後前半の3分の2は削除された。しかし、後ろの3分の1は残り、我が国の歴史のベースとなっている。まさか、この現在において神話部分を信じている者がいるとは思えないが、例えばアメリカでは今なお、キリスト教の影響で、進化論を信じない人が少なくないというから何ともいえない。

 これまでの研究成果からは、日本書紀の内容はかなり盛られているようだ。それは政治的な書物であることから当然のことだろう。勝者が自分たちの支配を正当化するために作り上げた歴史。例えば、大化の改新や聖徳太子の話などである。

 興味深かったのは、「天皇と皇后」の組み合わせについてである。「天皇」の概念は元々中国のもので、その対になるの概念は「天后」だという。つまり「天皇と皇后」の組み合わせが成立したのは、「皇后」のいなかった時代であり、つまりは、天皇号が我が国で成立したのは、天武の途中からではなく、女帝である持統から使われたというのが著者の推測するところだ。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。



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寺の護寺費を振込みに行った

2018-06-13 20:21:30 | その他
 今日は、郵便局まで行って、実家の寺の護寺費なるものを振込に行った。支払うのはいいんだが、寺のあるのが田舎なので、振り込みが郵便局からしかできない。郵便局は少し遠いので、ちょと面倒臭い。コンビニ振込なら近くていいのだが。

 ちなみに私は宗教なるものは全く信じていない。
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書評:吉田麻也 レジリエンス - 負けない力

2018-06-13 09:50:27 | 書評:その他
吉田麻也 レジリエンス――負けない力 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
クリエーター情報なし
ハーパーコリンズ・ ジャパン

・吉田麻也

 最初に断っておきたいが、私は運動方面(スポーツとカタカナで言うの嫌いだ)には一切興味はない。その中にはもちろんサッカーも入る。著者は有名なサッカー選手のようだが、私は興味がないので、今回初めて名前を知ったくらいだ。

 普通この手の本はまず読まないのだが、今回は頂き物ということもあり、自分が食わず嫌いという可能性もあるので、自分の知らない世界を探求しようという好奇心で読んでみた。読んでみたら案外面白かったという可能性もあるからだ。

 描かれているのは、一言で言えば、著者がこれまで歩んで来た道ということだろうか。要するに、自分はがんばってここまで来たと言いたいんだろうが、残念ながら私には「ふ~ん」という感じしか受けなかった。

 それでも面白いと思ったのは、著者の兄弟の名前だ。著者は「麻也(まや)」で、その名前からよく女の子に間違えられたそうだ。ちなみに長兄は「穂波(ほなみ)」、次兄は「美礼(みれい)」らしい。麻也パパ、どれだけ女の子が欲しかったんだ?

 もう一つ興味深かったのはJリーグのプロ契約には、A契約、B契約、C契約に分かれていて、それぞれ待遇が違うということ。また、バスの席なんかもベテランの指定席というようなものがあったという。お前らどこかのガラの悪い高校生か?どうもこのような体育会系的な部分が自分には合わないようだ。

 一読してみて、つくづく私には興味がない世界だということを再認識したが、自分に合わないだけで、この道に興味を持っている人、著者のファンの人にはいいのではないかと思う。

☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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面皰?をつぶす

2018-06-11 12:06:28 | その他
 夜寝ている間に、上唇の少し上のほうが腫れて、唇が動かしにくくなってきました。特に痛みはなかったのですが、寝ている間にどんどん腫れてきました。朝起きてみると、腫れの中心部に白くなっている部分があります。これは面皰なんでしょうか?(ある一定の年齢を超えると面皰でなく、吹き出物という説あり)

 針で白くなっている部分をつつくと、内容物が出てきました。腫れは少し引いたようです。これまでも似たような経験があるので、このまま治っていくものと思います。
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広島工大公開講座

2018-06-09 20:52:45 | セミナー、講演会他
 今日は、「広島工業大学公開講座」を聴講してきた。今年の大きなテーマは、「地球環境を探る」というもので、今日のテーマは「生殖細胞と環境ストレス」と「大津波から蘇る海岸生態系の今」の2つだ。5月26日と6月2日にもそれぞれ2テーマずつ行われていたが、どちらの日も都合がつかなかったので、今日だけ出席してきたというわけだ。

 それぞれの内容を一言であらわせば、一つ目は、環境ストレスが生殖細胞にどのような影響を与えるかということだ。2つめは、海浜植物の重要性といったことだろうか。各講義の時間が大体90分なので、それほどくたびれずに聴講できた。
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京都旅行8

2018-06-08 13:36:21 | 旅行:京都府
 京大の総合博物館の次は、京都駅の近くでどこか周ってみることにした。今日は帰る日なので、なるべく京都駅に近い方がいいからだ。まず寄ってみたのは三十三間堂。ここは、正式には蓮華王院といい、天台宗妙法院の境外仏堂に当たる。ここは昔何度か行ったことがあるのだが、今回行くと、新しい建物から入って三十三間堂に入るように変わっていた。本堂内部には、有名な千手観音が、中央部の大きな仏像を中心に千体安置されていることで有名である。

〇三十三間堂


 次に訪れたのが養源院。三十三間堂の隣にあるが、多くの襖絵で有名だ。またこの寺の天井は血天井であり、関ヶ原の戦いに先立つ伏見城の戦いにおいて、城を守っていた鳥居元忠以下1000人余りが自刃した廊下の板を供養のために寺の天井に使ったものである。だから、その時の血痕と言われるものが天井に今でも残っているが、説明を聞いても、何が何だかよくわからなかった。

〇養源院


 養源院を観たあと、バスで京都駅に戻ろうとしたが、来るバス来るバスが超満員の状態。この日は平日だったにも関わらず、京都は観光客で溢れており、なかなか結構なことである。そんな状態なので、バスに乗るのはあきらめて、京都駅まで歩くことにした。この旅行ではとにかく歩き回っているので足が痛い。

                                 京都旅行 Fin

〇関連過去記事
京都旅行7

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京都旅行7

2018-06-07 11:16:43 | 旅行:京都府
 最初の2日で歩き過ぎたので、3日目は足がかなり痛い。泊っているところは京都駅の傍なので、今日はなるべく近場を周ることにした。まず行ったのが「銀閣寺」である。きんきらきんになった金閣寺よりは、渋い感じの残っている銀閣寺の方が、個人的には好みである。

〇銀閣寺


 銀閣寺を見た後は、今出川通りを西に進み、母校の京都大学方面に行く。目当ては、京都大学総合博物館だ。実は、前の日に、立て看板の撤去問題で、大学当局と一部学生がもめているとテレビで放映していたこともあり、今どうなっているかをちょっと見てみたくなったのもある。私が学生のころは、立て看板など普通のことであり、完全に風景に溶け込んでいたのだが、時代が変わったということだろうか。本部の時計台にもかっては「竹本処分反対」と大きく書かれていたと思うが、今は綺麗なものだ。吉田神社の鳥居を眺め、本部の時計台を見て、博物館まで歩く。

〇吉田神社の鳥居


〇京都大学本部


〇京都大学総合博物館


 京都大学総合博物館は1997年に開館したもので、もう20年以上の歴史がある。それまで集めた資料を、自然史、文化史、技術史という観点から展示しているもので、入り口は道路に面しており、大学構内に入らなくてもよいので、観光客でも比較的入りやすいと思う。

〇関連過去記事
京都旅行6
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書評:共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ

2018-06-07 09:52:53 | 書評:その他
共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ
クリエーター情報なし
集英社

・ルーク・ハーディング、(訳)高取芳彦、米津篤八、井上大剛

 普段は、この手の本はあまり読まないのだが、たまには目先を変えるのもいいかということといただきものということもあり読んでみた。本書は、トランプ大統領のロシア疑惑を糾弾するため、徹底的な取材をもとに書かれた本である。個々の出来事については、色々と報道されていたような覚えがあるが、一連の疑惑を一冊に纏めているため、読者のその全貌を知ることができるだろう。トランプ大統領の最近の動きを見ていると、どうかと思うようなところもあるが、ビジネスの世界で生きてきただけあって、「駆け引きはうまいなあ」というように感じる。

 読んでいて、「アメリカ大丈夫か?」と思わないでもないが、この本のように国の最高権力者を弾劾する内容のものを堂々と出版できるというのは、まだある意味でアメリカという国の健全性を示しているのではないだろうか。世界には、決して権力者をま正面から批判できない国はいくらでもあるのだ。しかしトランプ氏が大統領でなくなったときに、どこかの国みたいに、その反動がいろいろ出てきそうでちょっと怖い。

 しかし、読んでいて本の厚さに圧倒される。もっとコンパクトにはならないものだろうか。いくら渾身のルポだと言ってもあまりに厚過ぎると読者は途中で疲れてしまうと思う。まあそれだけ書きたいことが沢山あったということかもしれないが。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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