晴れ、4度 東京
ずっと行きたいと思っていた美術館がありました。規模は大きくありませんが、見てみたいものを所蔵しています。荏原製作所を興した畠山一清が白金台に構えた畠山記念館です。お茶の道具から能装束まで緑の庭園に囲まれた木造家屋が畠山記念館です。年明けから、梅、椿、桜、桃をテーマに「春に想う」展示がされています。展示期間の後半のメインは、桜と桃。
私はお茶を嗜みませんが、お茶の道具を見るのが好きです。小さな茶入れを優しく包む仕覆の裂地まで古い物であればあるほど、それに触れて来た人たちの声が聞こえて来そうです。お茶の道具は、お椀ばかりか花入れ、お軸、香合、お懐石に使う塗り物、器の数々、見るものも多岐に渡ります。このせっかちな私も記念館に入る前の庭園を廻りながら心を鎮めます。
この畠山記念館を知ったきっかけは、尾形乾山です。琳派の尾形光琳の弟、陶工でもあり絵筆もとります。その描くものは何処か力が抜けています。花ひとつ、細かく写実的ではありません。色遣いもあの当時、江戸時代の日本にしては奇抜だったかもしれません。
展示物は予めウェッブで知ることが出来ますが、今回展示物を調べずに出かけました。これも出会いです。何に出会えるか、暖かな日差しの中、白金台の初めての道を歩きました。
人もまばらな記念館、静かな空気が流れています。酒井抱一の「桜に瑠璃鳥図」お軸は茶室同様畳に上がって拝見出来ます。桜の螺鈿が施された明月椀、さほど古い物ではありません。元は織田信長の弟が考え出した明月椀だと聞いたことがあります。塗りに施された桜の花がこの季節を写し出しています。
尾形乾山も4点。 結鉾香合。梅の花です。このボッコリした形を手に取ってみたくなります。
銹絵染付絵替り四方向付、銹絵も乾山の得意とする所です。四角い向こう付けですが、やや口が開いています。
色絵絵替り土器皿、実はこの土器皿の写しを持っていますが、本歌はなんとも風情のあるものです。写しは写しと知ります。
色絵福寿文手鉢。 外は、黄色と紫の染め分け。中は、乾山がよく使う緑地に白抜きの椿です。この色遣い、この展示の前から動けないでいました。モダンだと思います。こんな発想、江戸時代の人の何処から湧いて来たものか、乾山がこの手鉢を作る様子を思い浮かべます。
少ない展示物です。小一時間もいたでしょうか、とても満ち足りた気持ちになりました。帰り道、何処からか沈丁花の香りが漂っていました。