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インドの南西ゴアにポルトガル人が唐辛しを南米から持ち込んだのは1500年代、それから500年の間に今のインド料理が出来上がったのどそうです。インドは南北にも延びています。宗教もヒンズー教、イスラム教、ゾロアスター教がありその上カースト制まであるのですから、一概にこれがインド料理ですとは括れません。唐辛子が入って来るまでは胡椒が辛みの香辛料です。
インドのカレーの変遷をインドの歴史、長い間支配したイギリスとの関係から探った本「インドカレー伝」の書き出しは唐辛しの伝来からです。主人が先の日本出張で私に買って来てくれた本です。作者リジーコリンガムはイギリス人ですから、もちろんイギリス料理とインド料理のお互いの影響を解くところに主眼があります。イギリス料理だとばかり思っていたケイジャーやマルガトニースープが実はインド料理の影響を受けて出来たものだったのです。何処に行っても本国での生活様式を変えないことで有名なイギリス人が缶詰ばかりの食事に飽き足らず、インド料理に傾斜して行く過程、もちろん現地女性と結婚すれば、家庭の味は融合したものとなります。
イギリスは中国からお茶の木を持ち込みました。お茶のプランテーションをインドに作り上げたのはイギリスです。初めて知ったことでしたが、インド人は実は紅茶を飲まない民族だったそうです。5000年の歴史を持つと言われているインド医学アーユルベダにもお茶の効用はなかったのだとか。そのインド人に紅茶を飲ませるために、「紅茶普及協会」を作り各家庭を廻り飲み方、紅茶の入れ方をイギリス人が指導したことを知ってびっくりでした。もちろんイギリス人が指導したのはイギリス流紅茶、それを取り入れたインド人はご存知のように甘い甘いスパイスの効いたチャイに作り変えました。小さなコップのチャイのカロリーは40カロリーだそうで、暑い夏も寒い冬もこのカロリーに貧しい人は支えられています。
カレーと言う食べ物がインドにはないと以前書いたことがありますが、カレーという言葉を作ったのもイギリス人です。日本で一番食べられている固形状のカレーはイギリス由来の小麦粉カレーです。もちろんカレー粉もありません。カレー粉もイギリス人が便宜上作り出したものです。
作者は世界中にインド人が持ち込んだカレーの行く末を見ています。日本には東京新宿の中村屋に戦中亡命して来たチャンドロラボースが伝えたというカレーがあります。ボースのカレーも固形状のカレーを好きな日本人が東洋一カレー好きであることもよくご存知です。
ここ数十年、イギリスでも本場のカレーを食べたいという声が上がっていて、BBC放送では、マドゥファージャフリーの料理番組が流れているそうです。 1995年刊行のマドゥファーの本についても述べられていました。
4回程、北のインドを旅しました。主人にきつく止められていますので、屋台料理は経験がありません。一日3回インド料理を食べても飽きません。この本のおかげで、もう一度香辛料の香りの向こうにある何かを掴めるような気がしました。
ちなみに私が40年程前初めて行ったイギリスで初めて食べたのは、小さなチキンが丸々一羽のったインドカレーでした。カレーと聞いて頼んだのに、大はずれ。悪戦苦闘して食べたイギリスのカレーです。