曇、26度、84%
先日泊まった深圳のホテルの部屋は20階でした。テェックインしたのは日が暮れてから、用事を済ませ部屋に戻ったのは夜半近くでした。旅先でも朝目が覚める時間は変わりません。いつものように起きて、主人と同じ部屋ですからそっとカーテンを開けました。外はまだ真っ暗です。山向きの静かなその部屋はきっと遠くに走る高速道路の明かりが見えなければ、田舎のホテルにでも泊まっているようです。窓辺にコーヒ−テーブルを持って行き、その上でキーを叩いていました。
陽が上り始めると山の緑が段々色付いてきます。ホテルの裏には、古くからの住宅が黒い影を落としていました。七階建てのそのマンションの屋上には中国らしく、後からまた部屋を作り足しています。すっかり陽が上って、屋上の様子が見て取れるようになりました。屋上に上るための階段が2つあります。その左側の階段を出た辺にどうも人がきちんとお布団を敷いて寝ています。一人だけではありません。数えると五人。皆がそれぞれのお布団に掛け布団までかけて寝ています。その朝の気温、27度でした。しばらくすると、一人起き二人起きして、それぞれが自分の布団を抱えて左側の階段を下りて行くのが見えます。 ところがまだ皆が寝ている頃から、右の階段から出て来たのが茶色の犬です。きっとこの距離でこの大きさに見えるからには中型犬です。歩く姿や毛の色が昔の我が家の犬のテツに似ています。犬は人が寝ているのに気付いているのですが、階段が違うということは、きっと棟が違うのでこの人たちと面識が少ないのかもしれません。遠巻きに眺めては右の階段の辺に戻ります。やっと最後まで寝ていた人が起きて来ました。なんでまた、屋上で寝ようなんて考えついたのでしょうか。気候的にはちょうど良い、蚊も上がって来ない高さです。このマンションの住民、決して生活が大変だという訳でもなさそうです。中秋節も終わった週末、皆で何かの余興だったのかもしれません。
香港も含めて中国では犬を飼うことがブームになったのは、最近の話です。香港にくる前、30年近く前ですが、香港に行けばチャウチャウ犬を散歩させている人の会うことが出来るだろうと夢見ていましたが、そんなの夢でした。中国でもやっとペットとして犬を飼うようになりましたが、日本同様、無理な繁殖、多くなりすぎたペットの販売は問題になっています。犬を飼うことイクオールお金があることと思っている向きもあります。
屋上の茶色い犬は日向ぼっこをするでもなくウロウロと人間がいなくなった後も屋上を歩いていました。この犬は幸せそうだなあと思います。庭先を繋がれもせず歩いていた田舎の犬を思い起こします。田舎の庭先が都会の屋上に変わっただけのことです。