晴れ、29度、58%
今香港の家にある私の靴は10足、あとは全部日本の家に返しました。暑い香港です、3月頃から10月半ばまではサンダルで通します。サンダル以外の靴は何を残してあるかなと靴袋を開けてみました。その中のひとつがルブタンのミュールです。でもこのミュールに合わせる服は日本にです。そうだ、ミュールのかかとの修理に出すつもりでした。
かかとの修理が終わった靴を持って家に帰り床に置きました。その横に履いていたミュウミュウのサンダルを脱ぎます。二つ並んだ靴を見て思います。同じ足が履く靴に見えません。今年はよく見かける底厚のサンダルは、実に履き易くこの赤のサテンのサンダルは昼間、夜になるとやはりミュウミュウの黒のスワロスキーの飾りの付いたものを履きます。底が厚い分確かに軽い靴ではありませんが疲れません。坂の上り下りの生活です、滑らない足を包み込んでくれるサンダルは助かります。決して美しい形とは言えませんが、この夏はよく働いてくれました。
それに比べて、ルブタンのミュールは流石の形です。 ミュールはすぽっと抜けることがありますが、つま先とかかとに薄く羊の皮が張ってあり滑り難くなっています。サテンの布ばりの靴です。靴の裏は、 ルブタン色。真っ赤な靴の裏です。ここ数年ルブタンは金属の鋲付き靴が主流です。どうも好きになれません。鋲がいっぱい付いた靴を履いている素敵な人を見ないからでしょうが、自分では決して履こうとは思いません。靴の修理に行くときも取りに行くときもペダーストリートのルブタンのお店の前を通ります。ウィンドーには鋲付き靴がずらりと並んでいます。鋲が付いていなくてもきれいな形の靴なのにと横目で見遣ります。
母は靴好きでした。セミオーダーとやらで随分と靴を持っていました。でも亡くなる前の10年、パーキンソン氏病もありましたし、股関節を人工の骨に入れ替えたりで好きな靴を履く事が出来ませんでした。サイズも好みも違う母の靴はもう一足も残っていません。
二つ並べた自分の靴を見ながら、さてどちらの靴が傷んだら私はがっかりするかなと想像します。形のきれいなミュールではなさそうです。足入れの良い、しっかりと包み込んでくれるミュウミュウのサンダルが傷んだときは、きっと心に穴が空くでしょう。
それにしてもルブタンは心憎いまでに、美しい。 靴袋もルブタン色です。