夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『バンクーバーの朝日』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の2本目@なんば)

2015年01月02日 | 映画(は行)
『バンクーバーの朝日』
監督:石井裕也
出演:妻夫木聡,亀梨和也,勝地涼,上地雄輔,池松壮亮,高畑充希,宮崎あおい,
   田口トモロヲ,徳井優,鶴見辰吾,石田えり,光石研,佐藤浩市他

前述の『ベイマックス』〈字幕版〉を観たあと、TOHOシネマズなんば別館へ移動。

本館のトイレが『妖怪ウォッチ』のせいでスゴイことになっているとしたら、
別館は別館で、ここのトイレの状態を知らない人が多い様子。
「流れきるまで数秒間」との注意書きがあるんですけどね、数秒間じゃムリなんです。
私のなかでは数秒間といえば5秒以内ですが、
流れきるまでに少なくとも30秒、もしかすると1分かかりますもん。
そんなにレバーを押し続ける人は少ないと見えて、流れきっていない個室多数。
パッと見はまるでトイレが詰まっているかのよう。
しかし詰まっているのではありませんからご安心ください。
レバーを必死で押し続けると、必ず流れます。気長に気合いを入れてどうぞ。

さて、満島ひかりの旦那、石井裕也監督。
『川の底からこんにちは』(2009)を観たときは、
この先もずっと一風変わった映画を撮る監督であり続けるのだろうと思っていましたが、
『舟を編む』(2013)といい、『ぼくたちの家族』(2013)といい、
万人受けしそうな作品を撮る人になりましたね。
変わった人でいるほうに期待していたわけではありませんが、意外です。
もともとはいま撮っているような、変じゃない映画を撮りたかったのかも。
普通の(?)ドラマを撮るために、最初にヘンテコなものを撮ってみせて、
メジャー級になったいま、予算も飛躍的に上がって、好きにできるようになったのか。

カナダで数年働けば、すぐに日本で家が建てられるぐらい稼げる。
そう信じて、1900年代初頭、多くの日本人がカナダのバンクーバーへ。
しかし、そこで待っていたのは劣悪な労働環境。
カナダ人の半分の賃金で働く日本人は、仕事を奪う者として憎み蔑まれる。
容赦ない差別を受け、過酷な肉体労働に低賃金では貧困に喘ぐばかり。

こうして日本に帰れなかった移民たちの子どもが生まれ育つ。
レジー笠原(妻夫木聡)、ロイ永西(亀梨和也)、ケイ北本(勝地涼)、
トム三宅(上地雄輔)、フランク野島(池松壮亮)もそんな移民二世。
辛い毎日を送る彼らが唯一笑顔を見せるのが野球をするとき。

彼らのチーム“バンクーバー朝日”は、ごつい白人チーム相手に連敗を重ね、
リーグで万年最下位をを記録している。
バンクーバーに暮らす日本人は、そんな朝日をバカにしつつも見捨てない。
朝日は日本人街にとって希望の光なのだ。

新キャプテンに就任したレジーは、ある試合で暴投気味の球を避けようと、
咄嗟にバットを出したところ、それがコロリと野手の前に。
結果的にはアウトになったが、体が大きくて動きの鈍い白人相手ならば、
小技を使う野球が有効なのではないかと思いつく。
バントと盗塁で徹底的に相手をかき回してみると……。

何度も書いているように、野球の映画には甘いです。正当な評価ができません。
そしてこれもやっぱり好きです。

レジーの妹であるエミー役の高畑充希に涙を誘われます。
理解ある白人家庭でメイドを務め、進学をあきらめるなと言われて頑張り、
奨学金を受けられることになっても、ほかの保護者からクレームが入って取り消しに。
彼女の耐える姿が本当に切ない。
「ええかっこうしぃ」の佐藤浩市演じる父親と、息子と娘を守る石田えり演じる母親も○。

差別ゆえに職を失ったフランクが日本へ戻ることになったとき、
日本人であってもカナダで生まれ育った彼の胸に不安がよぎります。
白人に差別されるのと、日本人に差別されるのと、どちらがきついだろう。
そんな彼の言葉に考えさせられました。

「ま、いろんなことがあったけど、俺はやっぱり野球が好きだ。
 野球ができるならば、この国に生まれてよかった」。
はい、私もやっぱり野球が大好きです。

男はアタマとタマを大事にしなくちゃ。

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