夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ストックホルムでワルツを』

2015年01月07日 | 映画(さ行)
『ストックホルムでワルツを』(原題:Monica Z)
監督:ペール・フリー
出演:エッダ・マグナソン,スヴェリル・グドナソン,シェル・ベリィクヴィスト他

くずはモールで2本観て梅田まで戻り、スカイビルを目指してテクテクと。
樟葉への往復がすんなりできるのかどうか自信がなかったため、
シネ・リーブル梅田の座席はあらかじめ押さえてはおらず、
到着してからどれを観るか検討。

京阪電車の中でプリントアウトしたタイムスケジュールを眺め、
タイトルに惹かれていた『あと1センチの恋』を第一候補にしていたら、
上映1時間前だったのにすでに満席。
19:00に福島へ着けるように、18:30終了の本作を観ることに。

スウェーデンを代表するジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの人生を映画化。
1937年生まれ、2005年に67歳で亡くなった彼女は美貌の人でもあったようで、
彼女を演じるエッタ・マグナソンもスウェーデンのミュージシャン、美人です。

スウェーデンの西部、森に囲まれた田舎町ハーグフォッシュに暮らすモニカは、
5歳の娘エヴァ・レナを抱えるシングルマザー
エヴァ・レナの世話を両親に託し、電話交換手の仕事をしつつ、
友人のマリカなどのバンド仲間と巡業へ。
いつかジャズシンガーとして成功する日を夢見ている。

なかなかそんなチャンスは巡ってこなかったが、
ある日、ジャズクラブのステージに立つ彼女を見た評論家レナード・フェザーが、
ニューヨークに歌いにこないかと声をかける。
よりによって指定されたその日はクリスマス。
エヴァ・レナは寂しさにしくしくと泣き、父親は呆れるが、モニカはニューヨークへ。

ニューヨークのクラブで共演するバンドはトミー・フラナガン・トリオ。
モニカが大ファンのエラ・フィッツジェラルドの伴奏者として名高いトミーを目の前にして、モニカは大興奮。
わけのわからぬ小娘の登場に最初は大丈夫かと思うトミーだったが、
トミーたち黒人には控え室すら与えられていないと知ると、
自らの控え室に招き入れようとするモニカ。
支配人に怒られるからと断ると、モニカのほうが控え室から出てきて、
バンドの音合わせに参加する。

おかげでモニカの緊張も解けて、上手く行くと思えたステージだったが、
モニカが登場してすぐに客たちの表情が曇り、次々とクラブを退出する。
白人のモニカと黒人のバンドが同じステージに立つことに嫌悪感を見せたのだ。
ただちに歌うのを止めよと支配人が怒りをあらわにして飛んでくる。
この共演がNGだとは思いもしなかったレナードが取りなそうとするが、どうにもならない。

その夜、ひとりでバーに立ち寄ると、あのエラ・フィッツジェラルドが。
私の歌を聴いてほしいと、モニカがその場で歌いはじめると、
エラはただちに手でさえぎり、「誰かの真似では駄目。自分の気持ちを歌わなければ」と言う。

うなだれてハーグフォッシュに帰ると、誰もがそれ見たことかと言いたげ。
父親にはどやされ、同僚には嫌みを言われ、もう巡業には行かないとモニカは決める。
しかし、バンドが巡業に出る朝、マリカはいつもどおりに迎えにくる。
マリカから叱咤激励され、母親にエヴァ・レナのことを頼むと再び巡業へ。

エラの言葉の意味がわからない。そう感じていたモニカだったが、あるときふと考える。
アメリカのことなんかわからないのに、アメリカのことを英語で歌う意味があるのか。
母国語の歌詞をつけて歌えば、自分の気持ちを込められるのではないか、
聴衆の心にも訴えかけられるのではないかと。
この試みが功を奏し、モニカはスターダムへと駆け上がってゆくのだが……。

自身もプロの音楽家になれる可能性があったのに途中であきらめてしまった父親は、
どうなろうともあきらめようとしないモニカを見ると腹立たしくて仕方ありません。
一方のモニカは、自分のことをまったく認めてくれない父親にイライラ。
晴れ舞台をいちばん見てほしいのは父親なのに、招待しても来てくれない。
意地を張りつづける父親と娘を盛大に応援する母親ですが、どちらも娘を支えています。

モニカがニューヨークでビル・エヴァンス・トリオとの共演を果たし、それをラジオで聴く両親。
のちに父親がモニカにかける電話のシーンには涙が溢れました。
長距離電話で声の到着が遅れるのが気まずいから黙って聞いてくれという父親。
娘にはずっと怒ってばかりだった父親がかける言葉。
見どころ、いや、聞きどころです。

アルコール依存症の気配もあったモニカ。
エヴァ・レナのけなげさにも胸を打たれます。

音楽はあまり出てこないミュージシャンの伝記映画もたくさんありますが、
これは歌の魅力もたっぷりと。
いい感じで観終わって、今度は福島へ向けてテクテクと歩いたのでした。

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