夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『チャンス商会 初恋を探して』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の10本目@梅田)

2015年10月06日 | 映画(た行)
『チャンス商会 初恋を探して』(原題:Salut d'Amour)
監督:カン・ジェギュ
出演:パク・クニョン,ユン・ヨジョン,チョ・ジヌン,ハン・ジミン,
   ファン・ウスレ,ムン・カヨン,チャンヨル他

ストーリーも何も知らず、まだ観ていない作品を探していたら
これがちょうど公開されたばかりだったというだけ。
タイトルから軽いラブコメを予想して行ったら、泣けて泣けて。

ここからすでにネタバレになりますので、ご覧になる方は読まないでください。

『やさしい嘘と贈り物』(2008)のリメイクだと気づいたのは、
上映時間の半分をとっくに過ぎ、残り30分ちょいになったころ。
基本的にオリジナルに忠実であると言っていいのに、
舞台がアメリカから韓国に移っただけでこうも気づかないとは。
オリジナルでも当然泣いたはずなのですが、こっちのほうがさらに良かったかも。

スーパーマーケット“チャンスマート”で働くソンチルは、
気むずかしくて怒ってばかりの天涯孤独な老人。
同町は再開発地区に名乗りを上げて活性化を図ろうとしているが、
住民のなかで唯一ソンチルだけが押印を拒否し、
そのせいで隣町にオイシイ話を持っていかれそう。
チャンスマートの社長チャンスがあの手この手を使って納得させようとするが、
ソンチルは絶対にハンコを押そうとしない。

ある日、向かいの家に引っ越してきた一家。
子連れの出戻りとおぼしき女性ミンジョンとその母親グンニム。
近所で花屋を開店したらしい。

ここのところ、自分の留守中に人の出入りがあるようだと感じていたソンチルは、
グンニムがソンチル宅から出てくるのを目撃して激怒。
しかしグンニムは、独り暮らしのソンチルさんが気になっただけ、
そんな失礼な物言いはないでしょう、お詫びに食事をごちそうしてくださいと言う。

女性と二人で食事なんてどうすればいいのかわからない。
恥を忍んでチャンスに相談すると、デートのコツをあれこれ伝授してくれる。
グンニムに会ってみれば思いのほか楽しく、ときめいている自分に気づく。
次第に彼女に惹かれていくが、なかなか素直になれないソンチル。
見かねたチャンスをはじめ、近隣の人びとがこっそり彼の恋をサポートするのだが……。

偏屈じいさんとお節介ばあさんの恋の話。
ところどころにばあさんが「なんとかハンコをつかせるから」との台詞があり、
もしやばあさんは再開発を目論む奴らの回し者なのかと思ったりもして。
やがてそれを知ったじいさんが傷ついて。というのがありがちな線。
何かありそうだと思いつつ観ていた1時間余り。
そしてやっと気づきました、『やさしい嘘と贈り物』のリメイクだと。

ここから全部ネタバレです。

ソンチルとグンニムは実は夫婦。
ソンチルにアルツハイマーの症状が出はじめたころ、
グンニムが末期の膵臓癌に冒されていることが判明。
ショックで自殺を図ったソンチルは、意識を取り戻したときには何もかも忘れていました。
家族のことを忘れて、新しい自分を作りあげたソンチルは、
自分は退役軍人で、生涯独身を貫いてきたと信じ込んでいます。
チャンスマートを築き上げたのはソンチルで、
ソンチルが社長と呼んでいるチャンスは本当は自分の息子なのに。

リメイクだとわかった瞬間、
町のみんなでソンチルを見守っていたということもわかり、涙が止まらず。
お調子者にしか見えなかったチャンスがどれだけ父のことを思っていたか。

記憶から消してしまいたくても消せない想い出に苦しめられることもあるのに、
どうしてずっと覚えていたいことを忘れてしまうのでしょう。

ここまで書いておいてナンですけど、予備知識なしにご覧になることをお勧めします。

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