夜な夜なシネマ

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『白い沈黙』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の25本目@西宮)

2015年10月25日 | 映画(さ行)
『白い沈黙』(原題:The Captive)
監督:アトム・エゴヤン
出演:ライアン・レイノルズ,スコット・スピードマン,ロザリオ・ドーソン,ミレイユ・イーノス,
   ケヴィン・デュランド,アレクシア・ファスト,ブルース・グリーンウッド他

TOHOシネマズ西宮で3本ハシゴの2本目。

原題は“The Captive”、「囚われた、監禁された」の意。
雰囲気だけで意味はない邦題に思えます。

個人的にはこの陰鬱さが好きで、必ず観てしまうアトム・エゴヤン監督。
どんどんハリウッド化しているような気もするけれど、やっぱり好き。
事件のしばらく後と直後、前と、時間が入り乱れて物語が描かれます。
全体像がわかるのは30分以上経ってから。
何も知らずに観に行ったほうが面白いと思われるので、
ご覧になる予定のない方のみ、この先をお読みください。

カナダ・オンタリオ州、ナイアガラフォールズの町。
マシュー・レインと妻のティナ、9歳の娘キャスは仲睦まじい一家。
フィギュアスケートが得意なキャスは、練習相手のアルバートと生涯コンビを組むのが夢。

その日もスケートリンクにキャスを迎えに行ったマシューとティナ。
出勤するティナと別れ、マシューはキャスとともに帰途に就く。
キャスのお気に入りのチェリーパイを買おうとダイナーに寄り、
ほんの数分後に車に戻ると、後部座席で寝転んでいたはずのキャスがいない。
半狂乱で警察に駆け込むマシューだったが、目撃情報は皆無で、
マシュー自身がキャスをどうにかしたのではと疑惑の目を向けられてしまう。
ティナからも責められ、夫婦の間にも深い溝が生じる。

それから8年が経過。いまだに手がかりは何もなく、キャスの生死もわからない。
マシューとティナは別居中。会えばティナがマシューを罵倒してしまうから。

このところ、ティナは客室清掃の仕事のさいに、客室で不可思議なものを見かける。
それはキャスの思い出の品にそっくりなものばかり。
なぜこんなものばかりが客室に置かれているのか。
そんな折り、事件担当刑事のニコールとジェフリーから連絡が入る。
ネットでキャスを見つけたかもしれないとのことで……。

時系列をごちゃ混ぜにしておいて、その説明はなくいきなり。
8年前の話か現在の話かは、ちゃんと観ていないとわからなくなります。
だから自然と観ることに気合いが入る。
だからと言って難解な話ではありません。
むしろ、アトム・エゴヤン監督の作品の中ではわかりやすいほう。
このわかりやすさがハリウッド化していると感じさせる所以でしょうけれども。

犯人は早くから明かされているので、謎解きの面白さはないし、
さまざまなところにアラが見えます。
それでも、わが子を思う両親の気持ちが伝わってきて苦しい。
犯人から何の連絡もなく何年も経ち、悲しみの縁で生きつづけるふたり。
マシュー役のライアン・レイノルズとティナ役のミレイユ・イーノスの熱演に心を揺り動かされます。

淡々と絶望的なオチで〆ることも多い同監督。
本作はそんなことはなく、それもまたハリウッド的。(^^;

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