夜な夜なシネマ

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『ドローン・オブ・ウォー』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の15本目@伊丹)

2015年10月14日 | 映画(た行)
『ドローン・オブ・ウォー』(原題:Good Kill)
監督:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク,ブルース・グリーンウッド,ゾーイ・クラヴィッツ,
   ジェイク・アベル,ジャニュアリー・ジョーンズ他

『ガタカ』(1997)の監督アンドリュー・ニコルと主演イーサン・ホークのコンビ再び。

ラスベガス郊外に妻子とともに暮らすトミー・イーガン。
アメリカ空軍の少佐で、かつてはF-16戦闘機のパイロットとして戦地で活躍した。
現在は無人戦闘機ドローン操縦士として政府のテロリスト掃討作戦に貢献。
ラスベガスの空軍基地内のオペレーションルームに出勤し、
はるか中東の上空を飛ぶドローンを遠隔操作。
テロリストらしき人物を確認すると、空対地ミサイルを撃ち込むのが彼の仕事。

死と隣り合わせだった以前の戦地とはまったく異なり、
人を殺しても、こちらが殺される危険は皆無。
時には民間人を巻き込んでしまうこともあるが、その責任を負わされることもなく、
すべてが「仕方なかった」のひと言で済まされる。
一日に何発ものミサイルを撃ち込みながら、自身は傷ひとつなく、
家族が待つ自宅へ帰って穏やかな時間を過ごす。誰もが羨む暮らし。

しかし、トミーは心穏やかに過ごせない。
対極にある仕事と家庭の時間に違和感が募るばかり。
戦地に戻りたいと上司に希望を出すが却下される。
やがて酒を手放せなくなり、近くにいる家族の心が遠のいてゆき……。

戦地から12,000km離れた冷暖房完備の部屋で戦争に参加するということ。
こんな異常な世界に身を置いて、まともな精神が保てるわけがありません。
しかし、そうでなくてもトミーの精神はまともではない。
「死ぬかもしれないこと」が怖いのではなく、「恐怖を感じられないこと」が怖いと言い、
それゆえに実戦に参加したがっているのですから。

人間性を取り戻したかに見えるラストに救いはありますが、ごく控えめ。
戦闘シーンもない、爆音も聞こえない、目に映るのは爆破後の煙だけ。
淡々と冷徹に描かれる、静かで恐ろしい反戦映画です。

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