夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『屍者の帝国』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の13本目@伊丹)

2015年10月11日 | 映画(さ行)
『屍者の帝国』
監督:牧原亮太郎
声の出演:細谷佳正,村瀬歩,楠大典,三木眞一郎,山下大輝,花澤香菜他

天才SF作家と呼ばれながら、まだ34歳だった2009年、肺癌で夭折した伊藤計劃(けいかく)。

彼がまだ存命だった頃、私はデビュー作の『虐殺器官』を読みました。
面白そうだと思って購入したのですが、まったく意味がわからず。
SFを読み慣れていないせいもあるのでしょうけれど、
そこに描かれる世界をどうにも想像することができないから、頭に入ってきません。
とりあえず最後までページはめくったものの、
こりゃ私には到底理解不能だと、ほかの著作には手を出すのをやめました。

そうこうしているうちに亡くなってしまい、
遺作がSF大賞を受賞したり、その英語版がアメリカでも賞を取ったり、
もともと高かった評価が故人となってさらに高まっている様子。

本作は冒頭30頁で絶筆となった未完の原稿を
盟友の円城塔が遺族の許可を得たうえで書き継いで完成させたもの。
きっとこの原作も私には理解不能だし、
アニメ映画化されたものを観ればわかりやすいかもしれないと思い。
こういうのを“スチームパンク”と呼ぶのですね。へ~っ。

19世紀末のイギリスでは、屍体蘇生技術が実用化されていた。
ロンドン大学の医学生ワトソンは、亡くなった親友フライデーを自らの手で違法に屍者化。
しかし、それが諜報機関“ウォルシンガム機関”にばれ、
ウォルシンガム指揮官Mの指示を聞かざるを得なくなる。

それは、屍者蘇生技術の第一人者フランケンシュタイン博士の手記を探せというもの。
いまや全世界に普及している屍体蘇生技術だが、
屍者は思考を持たないし、話すこともできない。
だが、フランケンシュタイン博士が手がけたザ・ワンは、
世界で唯一の思考と話し言葉を持つ屍者。
手記にはザ・ワンのような屍者を生み出す技術が記されているのだ。

ワトソンはフライデーを記録係として同行させることに。
2人のもとへはお目付役として英国陸軍大尉バーナビーが派遣される。
こうして3人はフランケンシュタイン博士の手記を求めて旅立つのだが……。

近未来ではなく19世紀末の設定で、舞台となるのはイギリスだったりロシアだったり。
死者と生者が共生する世界。この世界観はとても面白く美しい。
魂の重さ、21グラムの話にも興味を惹かれます。
しかし、最後までついて行こうと思うとかなりツライ。
フランケンシュタインが出てくるかと思えば、カラマーゾフとかノーチラス号とか、
文豪の小説に出てくる名前がいろいろ。
相当にいろいろな知識がないと、十分には楽しめません。

それでも原作を読むよりはずいぶんわかりやすく(たぶん)、
なんとか最後まで鑑賞できましたが、細部の説明は私には無理。
エンドロール後のシークエンスは洒落ていて、そこだけニンマリ。

これが伊藤計劃の長編小説を劇場アニメ化する〈Project Itoh〉の第1作で、
残り2作もまもなく公開予定。
観に行くとは思いますが、はたしてついて行けるかどうか。

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