夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『彼が愛したケーキ職人』

2018年12月22日 | 映画(か行)
『彼が愛したケーキ職人』(原題:The Cakemaker)
監督:オフィル・ラウル・グレイザー
出演:ティム・カルコフ,サラ・アドラー,ロイ・ミラー,
   ゾハール・シュトラウス,サンドラ・サーデ他

大阪ステーションシティシネマで8回目の『ボヘミアン・ラプソディ』を観たあと、
テアトル梅田へ移動。気になっていたイスラエル/ドイツ作品は、
奇しくもフレディ・マーキュリーと同じくゲイの男性が主人公。
イスラエルの新鋭オフィル・ラウル・グレイザー監督の長編デビュー作です。

ドイツ・ベルリンでカフェを営むケーキ職人トーマス。
彼のケーキとクッキーをいたく気に入っているオーレンはイスラエル・エルサレム在住。
ベルリン出張のたびにトーマスの店に立ち寄り、
おすすめのケーキを食べては妻への土産としてクッキーを買い求める。
いつしかトーマスとオーレンは深い仲に。

あるとき、次の出張予定を聞き、いつものように再会を約束して別れるが、
そこからぷっつりと連絡が途絶え、携帯にメッセージを残しても返事は来ない。
たまらなくなったトーマスがオーレンの勤務先に問い合わせると、
オーレンはエルサレムで事故に遭って亡くなったと告げられる。

失意のうちから立ち直れず、トーマスはエルサレムを訪ねることに。
オーレンの妻アナトが経営するカフェを突き止めると、普通の客を装って入店。
店を切り盛りしながら一人息子イタイを育てるアナトは、
仕事を探しているというトーマスを雇い、皿洗いや野菜の下ごしらえを頼む。

イタイの誕生日、いつものように下ごしらえを任されたトーマスは、
アナトが出かけた隙に、厨房にあったものを使ってクッキーを焼く。
帰ってきたアナトは驚き、トーマスを叱る。
オーヴンを使うことが許されているのはユダヤ人のみだから、
そうでない人間がオーヴンを使用したことがばれると大変なことになるというのだ。

しかしトーマスの焼いたクッキーを食べ、アナトはその美味しさを絶賛。
彼がオーヴンを使っていることがばれさえしなければ、
店でケーキやクッキーを出すことに問題はない。
やがでその美味しさが噂になり、彼のお菓子目当ての客が増えるのだが……。

オーレンとの仲はもちろん、知り合いだったとすらアナトに打ち明けられないトーマス。
オーレンのことがそれほど良い人だとは私には思えず、その部分では気持ちが乗りません。
しかし、トーマスのオーレンを想う気持ちは伝わってきて、とても切ない。
また、夫の相手がトーマスであったことを知ったときのアナトの表情。
『ボヘミアン・ラプソディ』のメアリーの気持ちにも通じるものがあります。

カフェを経営するにも政府の認定がどうとやらさまざまな制約があり、
外国人を雇ってもいいけれどオーヴンは触っちゃ駄目とか、
いろいろヘンテコだったり難しかったり。そんな点も目からウロコ。

言葉少ないトーマスがつくるケーキとクッキーがとても美味しそう。
彼の心がひとつひとつのお菓子たちに込められているようでした。
観に行ってよかった。

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