夜な夜なシネマ

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『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』

2020年08月05日 | 映画(か行)
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(原題:Grace a Dieu)
監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー,ドゥニ・メノーシェ,スワン・アルロー,エリック・カラヴァカ,
   フランソワ・マルトゥーレ,ベルナール・ヴェルレー,ジョジアーヌ・バラスコ他
 
 
フランソワ・オゾン監督がこんな作品を撮るとは、まったくの予想外でした。
何が予想外だったと言えばいいでしょう。
説明しにくいけれど、なんとなく実話を基にした作品なんて撮りそうじゃなくて。
 
聖職者による少年たちへの性的虐待が各国で起きていると思うと愕然。
『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)と同じ事件かと思っていたら、
これはこれでまた別の国での話なのですね。おぞましい。
こちらはフランス全土を震撼させた“プレナ神父事件”を基にしています。
 
フランス・リヨンに暮らす銀行家アレクサンドル。
妻と5人の子どもたちに囲まれて、幸せな日々を送っているが、
どうしても放ってはおけないことを目にしてしまう。
 
それは、彼の幼少期、性的虐待を繰り返しおこなっていた神父ブレナが、
今も子どもたちに聖書を教えているということ。
おそらく現在も同様のことをブレナはしているだろう。
これ以上、被害者を増やしてはいけないと、告発を決意するのだが……。
 
非常に淡々としています。
大きく分けて、被害者として登場するのは3名。
アレクサンドルの告発によって捜査が開始されます。
思い出したくもなかった過去を封印していたけれど、
その気持ちを翻して被害者の会を発足せたフランソワ。
会の存在を知り、連絡を取るエマニュエル。
 
驚くべきは、ブレナが自分の性癖を病気だと当初から認めており、
自ら枢機卿をはじめとする教会関係者に申告していたこと。
なのにブレナをそのまま聖職に就かせていたのですから。
その教区で問題になれば、ほかの教区へ彼を異動させるだけ。
 
フランス人の家庭にも驚きました。
アレクサンドルは幼少期に自分が神父から性的虐待を受けたこと、
それを告発しようとしていることなどを家族全員に話します。
また、フランソワも妻に相談し、立ち上がる決意を固めます。
顔を出して取材を受けることにも積極的で、
こんなことしたら子どもたちがいじめられたりしないのかとちょっと心配に。
何も悪いことはしていないのだから、いじめられると考える私があかんのか。
 
事情聴取のシーンも赤裸々。
そんなに事細かに全部記録されるのかとびっくり。
 
オゾン監督らしい作品とは思えませんが、らしくないから逆にわかりやすかった。
映画の出来としてはどうなのかわからないけれど、
こういう事実があったことを知り得ます。
 
父親らしき人と息子とおぼしき高校生ぐらいの子ふたりの三人連れで
観に来ている人を見かけました。もしかして聖職者なのでしょうか。

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