夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『リトル・ジョー』

2020年08月19日 | 映画(ら行)
『リトル・ジョー』(原題:Little Joe)
監督:ジェシカ・ハウスナー
出演:エミリー・ビーチャム,ベン・ウィショー,ケリー・フォックス,キット・コナー,
   デヴィッド・ウィルモット,フェニックス・ブロサール,リンゼイ・ダンカン他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの1本目。
 
オーストリア/イギリス/ドイツ作品。
ジェシカ・ハウスナー監督はオーストリア出身ですが、本作は全編英語。
なんとも言えない不快さがつきまとうサイコスリラー。
 
バイオ企業で新種の植物開発に携わる女性研究者アリス。
夫アイヴァンとは離婚、息子ジョーをアリスが引き取って育てている。
 
アリスがリーダーを務める研究チームは「人を幸せにする香り」を放つ花の開発に成功。
その花に“リトル・ジョー”と名付け、近々開かれる展覧会で発表するつもり。
 
アリスはリトル・ジョーを1鉢だけこっそり持ち帰り、ジョーにプレゼントする。
アリスから言われたとおり、毎日花に話しかけて大切に育てていたジョー。
 
ところが、ある日を境にジョーの様子がおかしくなる。
見た目も声も話し方もジョーのままではあるのだが、
アリスの問いかけに反応がなかったり、急に父親と暮らしたいと言い出したり。
どうやらジョーはリトル・ジョーの花粉を吸い込んだ様子で……。
 
不気味です。
 
リトル・ジョーは不稔性。つまり、花は咲いても種子はできません。
悪名高きモンサントが農家に種子を採ることを禁じていますが、
アリスたちも同じことをしているわけですね。種子ができると儲からないから。
 
「人間が植物の交配を禁じるなんて」と異論を唱えていた同僚ベラは、
リトル・ジョーの花粉を吸うと脳に感染すると見抜いていた唯一の研究者。
種子ができないようにしてしまったせいで、
リトル・ジョーはなんとか子孫を残すべくこんな手段に出たのだと。
感染した人間は、リトル・ジョーのことしか考えられなくなってしまうのです。
 
先日読んだ山田悠介の『種のキモチ』は、蒔いた種子が人間の姿に育ち、
人間と交配して増殖しようとする気持ちの悪い作品でした。
それに比べるとグロさは控えめですが、同じことを言いたいのかも。
 
人間が遺伝子を操作して植物を作り、繁殖までもコントロールしようとすること。
勝手な人間に対する戒めであるように思います。

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