夜な夜なシネマ

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打倒、手湿疹の巻〈エールをおくる〉

2015年02月08日 | ほぼ非映画(アトピー)
今でも毎朝、前日の「検索キーワード」を見るのが楽しみです。
笑えるキーワードもいろいろありますが、
相変わらずランクインしていて笑えないのが「手湿疹×脱ステ」、「手湿疹×脱保湿」。
 
映画と本にほぼ特化したブログにもかかわらず、
この検索キーワードでここにたどり着かれた方々の多さを知ると、
つらくて仕方なかった頃のことを思い出します。
 
先月、そうした方々のうちのおひとりからメッセージをいただきました。
脱ステと脱保湿を始めて約1カ月半だそうで、お仕事を休職中。
本当にこの方法で治るのか、治るならばどれぐらいの期間を要するのか、
それが不安で送ってこられたメッセージでした。
 
「乾燥ガビガビ療法」を始めてから私はもうじき丸2年。
死んだほうがマシとさえ思っていたはずなのに、今ではそれが嘘だったよう。
でも、その方とメッセージをやりとりしている間にいろいろよみがえります。
 
怖かったものあれこれ。
箸、歯ブラシ、ボールペンなど手で握らねばならぬものはすべて脅威。
トイレットペーパーホルダーに関しては今もトラウマ。
アルミホイルを切るときのギザギザも同様に怖い。
ファスナーの端が当たると痛くて、鞄の中は落屑だらけ。
 
治癒の度合いや速度は人によって異なると思うので、
楽観的な話をしてはいけないのでしょうけれども、
乾燥ガビガビ療法は耐えるだけのことはあると信じています。
 
私に言えるのは、「痒かったら我慢しすぎるな」。
思う存分、掻いて良し。ただし、「ナマ掻き」で。
爪は常に短く切って、服の上からは決して掻かないように。
そして、掻いた後は自己嫌悪に陥らぬこと。
 
暗くならない。ひたすら前向きに。
この状況を笑いのネタにするぐらいのつもりで。
……なんてことは、関西人にしかでけんかもしれませんが。(^^;
 
昨年、少し早めの忘年会の折り、
アラ還のお姉様から高田郁の『みをつくし料理帖』をお借りしました。
このお姉様のおかげで時代小説アレルギーはなくなったというものの、これは全10巻。
いったいいつ読み終われるやろと思いながらお正月に着手。
 
江戸時代後期、大阪で水害に遭い、天涯孤独の身となった少女・澪は、
大阪隋一の料理屋「天満一兆庵」の女将・芳に救われて奉公人に。
料理人として天性の素質ありと主人から見込まれた澪は、一兆庵で腕を磨きます。
ところが今度は火事に遭い、店を持つべく先に江戸に向かった芳の息子・佐兵衛が行方不明に。
澪と芳は一兆庵の再興と佐兵衛探しのために江戸へ。
「つる家」という蕎麦屋から誘われて、澪は料理人として働くことに。
おおまかにはこんな物語です。
 
次巻を読むのが楽しみでたまらず、しかし最終巻を前にすると、読み終わるのが悲しくて。
RPGでラスボスを倒したらこのゲームが終わってしまうと思うと、
寂しくてラスボスをいつまでも倒しに行けずにいるのと似ています。
 
どうして手湿疹の話からこんな時代小説の話になるんだと言いますと、
第7巻の『夏天の虹』に「これ!」という箇所があったから。
実はこの巻はAmazonのレビューで唯一評価が低かった巻。
と言っても、ほかの巻が4.5なのに対し、この巻だけ4.0だという程度なのですけれど。
澪に降りかかる、これでもかという不幸災難。
それにうんざりするというレビューが多く見受けられました。
しかし、私は泣けて泣けて。
 
脳卒中で倒れた知人がろくに食事を摂らなくなり、
食べる気を起こすような旨いものをつくってほしいという依頼が澪のもとへ。
手を使うのが不自由なその人のため、澪は食べやすいものを懸命に考えます。
柔らかいもの、喉を通りやすいもの、匙で食べられるもの。
そうして料理を提供しますが、その人はやはり食べません。
なぜなのかがわからず、信頼できる医師・源斉に相談したときの言葉に涙が。
 
「ひとの身体には、病に打ち勝つ力が潜んでいるように思います。
 あまり手を貸しすぎては駄目なのです」。
 
時間をかければ箸を使って食べることができるのだから。
澪が考えた「鯛の福探し」は、脳卒中の人だけではなく、
病ゆえに食べることに興味を示さなくなっていたの心を捉えるのでした。
 
手湿疹には箸は脅威となるので、やはり匙のほうがいいですけれど(笑)。
人に本来備わっている力を信じること。
 
エールをおくります。

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