『古の王子と3つの花』(原題:Le Pharaon, le Sauvage et la Princesse)
監督:ミッシェル・オスロ
声の出演:八代目市川新之助,石井マーク,小見川千明他
大阪ステーションシティシネマで『イノセンツ』を観た後、シネ・リーブル梅田へ移動。
大好きなミッシェル・オスロ監督によるフランス/ベルギー作品です。
字幕版と吹替版の両方を上映中ですが、吹替版しか時間が合わず。
字幕版を観たかったのになぁと思っていましたが、これは吹替版も当たりだったかも。
語り部とおぼしきお洒落な風貌の女性を囲む人々。
どんな話が聴きたいかと彼女から問われ、みんな好き放題にリクエストします。
どの時代の話がいいとか、恋愛ものがいいとか、愛憎劇がいいとか(笑)、
それはもう無茶苦茶で、女性から却下されるかと思いきや、
彼女はそれらをすべて含む物語を話して聴かせることができると言う。
ただし、ひとつにまとめるのではなく、みっつの話を聴かせますよと。
ひとつめのお話“ファラオ”の舞台は古代エジプト。
ある国の王子タヌエカマニは、ある国の王女ナサルサと相思相愛の仲。
結婚を認めてもらおうと、ナサルサの母親に面会するが、
自分の娘はエジプトの王ファラオにしかやれんと言われ、あきらめかける。
ナサルサに発破をかけられ、ファラオになるため旅に出たタヌエカマニは……。
ふたつめのお話“美しき野生児”の舞台は中世フランス、オーベルニュ地方。
非情な城主は、王子が学ぶことも歌うことも許さない。
何かにつけて怒られる王子は、不当に投獄されている囚人と壁越しに話し、
娘と会いたがっている囚人を密かに脱獄させる。
すると怒り狂った城主は王子を処刑することを臣下に命じ、森へと放つ。
臣下の協力を得て逃げおおせた王子は美しき野生児となり……。
みっつめのお話“バラの王女と揚げ菓子の王子”の舞台は18世紀のトルコ。
モロッコから逃げ出した王子はトルコにたどり着き、素性を隠して揚げ菓子の職人に。
市場で売っている揚げ菓子が食べたいとの王女のリクエストに、
たまたま献上された王子のそれが気に入られ、王子自ら配達することに。
ふたりはたちまち恋に落ち、城と店の間にトンネルを掘って会うようになるのだが……。
イマジネーションを刺激される、美しく素晴らしいアニメーション。
なんというか、この絵を観ているだけで高貴な気分に浸れます。
どれも素敵な話なのですが、第3話に登場する食べ物にまた目を奪われます。
王子が弟子入りした揚げ菓子屋の親父は傲慢で、自分のやり方しか許さない。
でもそんなことは気にしない王子は、揚げ菓子の形を変えてみたり、シナモンを入れたり。
絶世の美男子ということもあり、店はあっというまに賑わいます。
言うことを聞かない王子に親父が「クビにするぞ、出て行け」と言うと、
王子はあっさり「はいはい、今までお世話になりました。さよなら~」と言って出て行く。
慌てふためく親父がいい気味でした。
王女と密会するようになってから、王子がつくる揚げ菓子にはピスタチオが入っていたりして、
さらなる工夫があります。えーっと思うような食材もあったなぁ。忘れちゃったけど。
王女は王女でバラのゼリーをつくるのが得意。ダマスクローズのゼリーなんてのもありました。
第1話は昨夏に開催された展覧会のためにルーヴル美術館の依頼で制作された作品なのだそうな。
ルーヴル美術館とコラボしたアニメーション作品。逸品です。