『イノセンツ』(原題:De Uskyldige)
監督:エスキル・フォクト
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム,アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ,サム・アシュラフ,
ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム,エレン・ドリト・ピーターセン他
ひとり昼呑みのあと、寄席に行く前に映画を2本ハシゴ。
まずは大阪ステーションシティシネマにて、予告編を観て気になっていた本作を。
満腹のうえにビールと白赤ワインを1杯ずつ飲んでいたので、
例のごとく爆睡するパターンかと思われましたが、不気味すぎるせいでまったく睡魔に襲われず。
ノルウェー/デンマーク/フィンランド/スウェーデン作品。
ヨアキム・トリアー監督の『わたしは最悪。』(2021)の共同脚本で注目を集めた、
ノルウェーのエスキル・フォクト監督による長編第2作。
それにしてもキャストの名前、長い人が多くないですか。絶対覚えられん。(--;
郊外の団地へ家族と共に引っ越してきた9歳の少女イーダ。
両親は自閉症で口のきけない姉アナにかかりっきりで、自分のことは雑に扱われている気がする。
こんな夏休みのさなかに引っ越したところで、友だちなどできるはずもない。
そんなとき、同年代の少年ベンが声をかけてくる。
彼は不思議な能力を持っているらしく、物に触れることなく動かしてみせる。
それが面白くて、イーダはベンと遊ぶように。
一方のアナは、母親から言いつけられたイーダが外に連れ出した折、
先天性の皮膚疾患のある少女アイシャと仲良くなる。
アナとアイシャはお互いの心が読めるらしく、離れていても意思の疎通が可能。
時にはアイシャの力を借りて、自分が思っていることを口にすることすらできる。
アナとベンには似通った能力があることがわかり、4人は一緒に過ごしてその能力を高める。
最初は他愛のない遊びだったはずが、ベンの悪戯が次第にエスカレート。
人をも傷つけるようになったベンにイーダは恐怖を感じ、
アイシャもアナと共にベンを止めなければならないと考えるのだが……。
ミヒャエル・ハネケやヨルゴス・ランティモス辺りに嫌悪感のない人や、
『ミッドサマー』(2019)のような作品を好きじゃないのに観てしまう人にはお薦めです。
無垢と邪悪のはざま、子どもたちなりの葛藤が見えて、
上記の作品よりも切なさが感じられるから、私はさらに好きかも。
説明は多くありません。
イーダの両親は基本的には善人で、ヤングケアラーとまでは行かずとも、
イーダに姉の面倒を見させていることを申し訳なく思っている。
それがわかるからイーダは文句を言えずにいます。
でもやっぱり不満だから、時折こっそりアナに意地悪をしてみることもある。
ベンとアイシャは母子家庭に育ち、ベンはネグレクトを受けているに等しい。
アイシャの母親はそうではないけど、情緒不安定のところが見受けられます。
そういったことの説明はないから、観る側が想像するしかないわけですが、
アナが何を思っているのかわからない以外、残りの3人は少なくとも幸せには見えません。
孤独な子どもたちが特殊な能力を持ったとき、それが向かうところがさまざま。
自分の気持ちをわかってくれる人はいないからと、悪い気持ちのみ湧き上がる少年。
どんな状況にあっても明るく、今を楽しもうとしている少女はそれを許さない。
子どもたちの演技力が凄くて飲み込まれました。
大人って、頼りにならないなぁとつくづく感じます。
子どもの気持ちに寄り添えているか。