『コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話』(原題:Call Jane)
監督:フィリス・ナジー
出演:エリザベス・バンクス,シガーニー・ウィーヴァー,クリス・メッシーナ,ケイト・マーラ,
ウンミ・モサク,コーリー・マイケル・スミス,グレイス・エドワーズ,ジョン・マガロ他
『オーメン:ザ・ファースト』を観た後、母と面会して実家を少々片付けてから、
再びイオンシネマ茨木へ戻ってこの日に上映開始の作品を2本ハシゴ。
と言っても、本作は数週間前からシネ・リーブル梅田で上映されていて、
梅田まで行かなきゃ観られないのかと思っていたら、茨木でも上映してくれてラッキー。
どういう配給になっているのだか知りませんが、イオンシネマはこんなこともしてくれるから有難い。
しまったなぁと思ったのが、時代が『オーメン:ザ・ファースト』とかぶること。
しかもあっちは悪魔の子の出産話とはいえ、こっちも妊娠にまつわる話だから、
こうして思い出しながら書いているうちに、あれれ、どっちの話だったっけと混乱するはめに。
あっちは1971年の話でしたが、こっちは1968年の話。
1960年代から1970年代初頭まで実在した団体“Jane Collective”をモチーフにしているそうです。
監督は『キャロル』(2015)の脚本で第88回アカデミー賞にノミネートされたフィリス・ナジー。
アメリカ・シカゴの富裕な家庭に暮らす主婦ジョイ。
夫のウィルは弁護士で、多感な年頃を迎えた娘シャーロットとの関係も良好。
ウィルの同業者が集まる会合は退屈きわまりないものの、
隣家の未亡人ラナとカウチで昼間から優雅に酒を飲み、愚痴り合って発散。
何ひとつ不自由のない毎日を送っている。
しかし2人目を妊娠して以来、しばしば体調不良に陥る。
診察を受けると、心臓の疾患に妊娠が悪影響を及ぼしているとのこと。
ジョイが助かるには中絶が唯一の治療方法だと説明を受ける。
1960年代のアメリカでは人工妊娠中絶は違法。
のっぴきならない事情がある場合は、病院の医師たちによって審議される。
ウィルと共に審議会の席に呼ばれたが、ジョイの気持ちなどどこへやら。
母体がどうなろうと中絶は許さないと言われたも同然。
途方に暮れるジョイに何人かの医師は親身になってくれるが、
こっそり紹介された闇医者はその建物自体が治安の悪い地区にあっておののく。
逃げ出そうとしたときにバス停でふと目にした1枚のチラシ。
「妊娠に支援が必要な人はジェーンに電話を」と書いてある。
意を決して電話をかけたジョイは、安全な中絶手術を提供する地下組織“ジェーン”の存在を知る。
自分の中絶手術が終わればそれで終わりのはずだったが、
ジェーンの創設者バージニアに半ば強引に誘われ、運営を手伝うことになり……。
中絶を望む理由は問いません。望まない妊娠をした人に中絶を施す。
無料では運営が立ち行かないから、600ドルを支払える人が対象。
ジョイのように難なく払える人もいれば、どうにも払えない人もいます。
金を払えば施術してくれる男性医師ディーン頼みでやってきましたが、
ディーンが実は医師免許を持っていないことを知ったジョイが脅しに近い形で施術方法の指南を希望。
施術できるようになったジョイが以降は執刀するように。
活動期間中、ひとりの死者も出していないことが誇りだとありました。
お腹の中の子をあきらめなければいけないのはつらいけれど、
子どもを産めばその母親が死んだって知ったこっちゃないというのは変だろうと思うジョイ。
中絶が許されるかどうかを審議するのは全員男性医師だというのもおかしい。
自身の中絶後に夫と娘に隠れてジェーンの運営を手伝いはじめますが、
今まで家事完璧だった妻が出歩くようになり、冷凍食品を多用しだす。
この家庭は崩壊するかと思いきや、いつしか娘は母の活動に理解を示し、
犯罪に手を貸していると嘆くばかりだった夫もやがて妻を援護する側に。
この辺りは事実かどうかはわかりませんけれども、良い話でした。
『あのこと』(2021)のような悲劇を招かないためにも。