2060年には、わが国の人口は8,674万人になり、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が4割に達する・・・、という推計を国立社会保障・人口問題研究所が公表しました。
これを受けた新聞やテレビなどの報道や論評は、「ますます少子高齢化が進む」「何人で何人を支えることになる」「年金制度の存続がピンチ」「社会保障制度全体が厳しい運用を迫られる」等々、ここ何年も聞かされてきたのと同じような内容のものばかりでした。
この人口見通しなど、別に目新しいものでもなんでもありません。ほぼ同じような統計は何年も前から出ていますし、この研究所からは定期的に発表されています。
この研究所は、人口動向について、低位・中位・高位の三つのパターンを算出していて、今回公表されているものは中位のものです。ただ、その見通しは、たいてい公表数字より低位(人口減)の方向にぶれているように思われます。
それにしても、わが国が明確な人口減少社会に移っていながら、十年前と同じような意見が主流を成していることに大きな不安を感じます。
人口が減り、労働人口が減り、高齢者比率が高まる・・・、正確な数字はともかく、今時そんなことが分かっていない人などごく少数です。こんな発表などで、おたおたすることなど全くありませんが、未だに同じような意見しか聞かれないことに、おたおたするべきではないでしょうか。
五十年後、わが国は、「人口8,500万人、そのうち65歳以上の人が3,400万人」という国家になるのです。少々の誤差はあるとしても、これが現実なのです。
大変だ、大変だというのも結構ですが、現実の姿を大変だと騒いだり怖がっていたのでは話になりません。現実を見据えた対策を打っていかなくてはなりません。
人口が減るのがまずいと思うなら、人口を増やす方法を考えねばなりません。まさか、一夫多妻制というわけにはいかないでしょうから、移民を積極的に受け入れるのも一つの方法でしょう。
社会保障制度がもたないのであれば、根本的な改正が必要でしょう。現制度を手直しで対処していくのであれば、大幅な補償範囲の削減が必要になるでしょう。
どんな方法を取るにしても、そこからくる副作用は小さくないはずなので、慎重な対応を迫られることでしょう。
そして、何より大切なのは、何人で何人を支えるという現在の思考を捨て去ることでしょう。
その一つの方法は、高齢者の範囲の変更です。例えば、健康であれば誰でも75歳まで働ける社会を作り出せば、高齢者比率の概念は大きく変化するでしょう。
さらにこんな考え方も成り立つのではないでしょうか。つまり、一人一人が自分を支える社会モデルを構築することです。50年後の平均寿命は90年に近づくそうですから、例えば、最初の二十五年間は親や社会に養育される期間、成長後の四十年間は家族と自らの生活費と自分の引退後の費用を積み立てる期間、そしてその後の十年間は自分の生活費と社会に奉仕する期間、最後の十五年間はこれまでの蓄えと社会保障で生活する期間、とするのです。
つまり、世代間で支え合う仕組みから、個人の生涯で支える時と支えられる時を完結させる仕組みに社会を変えるのです。
どんな方法を取っても必要な資金に変わりがないと意見もあるでしょうが、例えば現行の年金制度を見ても分かるように、世代間で支え合うという制度は、人口減少社会では絶対に成立しないのです。現在の制度を続けて行けば、結局食い逃げ世代を作ってしまうことになり、ネズミ講に近いものになってしまいます。いえ、すでになりつつあります。
もう、ぼつぼつ本気で、私たちはそのことを認めなくてはならないのではないでしょうか。
( 2012.02.03 )