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雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

小さな小さな物語 第七部 ・ 表紙

2012-08-01 15:20:45 | 小さな小さな物語 第五部~第八部

         小さな小さな物語 第七部



       (No.361) から (No.420)まで収録しています。
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小さな小さな物語  目次

2012-08-01 15:19:19 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
       小さな小さな物語  目次 ( NO.361 ~ 380 )


   NO.361  富士山より高い山
      362  雪に埋れて
      363  新しい社会モデルを
      364  コダック社に学ぶ
      365  冬枯れの庭  


        366  プロの技
      367  魚心あれば
      368  デフレ克服
      369  銀河の姿
      370  鍵握る高齢者


       371  一票の格差
      372  平均とは?
      373  一期一会
      374  善管注意義務
      375  原子力と向き合う


       376  春らんまん
      377  イソギンチャクの戦い
      378  ロスタイムの感動
      379  ちょっとした差
      380  無駄足の数
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富士山より高い山 ・ 小さな小さな物語 ( 361 )

2012-08-01 15:17:24 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
戦国時代もようやく終わりを告げようとしていた時代のことです。
天下を手中に収めた徳川幕府の命により、黒田藩も江戸城天守台の普請に携わったが、その工事を終え、国に戻る途中、霊峰富士が見事な姿を見せていました。馬上の勇者も、徒歩の侍も、荷駄を運ぶ小者までもが、こぞってその姿を称えました。
すると、ひときわ頑強な体躯の豪傑が大声で否定しました。
「何の、わが鷹取城の背後に聳える福智山の方が高いわ」と。
そして、彼はその場の座興で言ったのではなく、死ぬまでその主張を曲げなかったという。


その豪傑の名は、母里多兵衛友信。黒田藩切っての豪傑であり、常に先鋒を務めた侍大将であります。それも、単に槍一筋の荒武者なのではなく、黒田長政より一万八千石を与えられた重臣であり、鷹取城を預けられていました。
さらに言えば、かの有名な民謡『黒田節』に歌われている「黒田武士」とは、この母里多兵衛友信のことなのです。


実は、母里多兵衛友信について調べている時に、このエピソードを知ったのです。彼については、別の機会に紹介させていただきますが、今回は「富士山より福智山の方が高い」という話を考えて見ました。
まあ、「どうということもない話だ」と言ってしまえばそれまでですが、何故このエピソードが今日まで生き残っているのかと考えますと、少し面白い側面が見えてきます。
一般的には、この話は、母里多兵衛友信という豪傑は、とてつもない頑固者だったそうで、その証拠の一つとして語られてきたようです。あるいは、お国自慢ということもあったかもしれません。
実際に、富士山と福智山の両方を見た人は、いくら重臣である豪傑の言葉とはいえ、笑ってしまうことでしょう。何せ、福知山は九百メートル程の山なのですから。
母里多兵衛友信は、おそらく、旅の無聊の慰めに大法螺を吹いたのか、同僚や部下たちが富士山をあまりに称えるので腹立たしかったのか、案外豪傑らしからぬ愛敬からお国自慢をしたのかもしれません。
ただ、この話、まだ通信手段の十分でない、鷹取城周辺土着の人たちには、かなりの真実性を持って伝わったかもしれないような気もするのです。富士山という名前は、その辺りでも知られていたかもしれませんので、福智山の方が高いとまで思わないまでも、それほど差がないのではないかと思う人が少なくなかったかもしれません。だって、天下無双の豪傑が自信満々に話すことなのですから。


この話、馬鹿げているといえばその通りかもしれませんが、もしかすると、現代に生きる私たちも同じような体験をしているのかもしれません。
溢れかえるほどの情報が乱れ飛ぶ社会でありながら、私たちの多くは、本当に重要な情報は伝えられていないかもしれないのです。例えば、尖閣諸島海域での出来事のビデオ漏洩事件は記憶に新しいことですが、同様の、いえ、それより遥かに重要な情報が、隠されたり、歪められたりして伝えられているかもしれないのです。
『これぞまことの黒田武士』と称えられた豪傑には悪意などありませんが、現代社会においては、悪意による情報操作が結構あるような気がしてなりません。

( 2012.01.28 )

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雪に埋もれて ・ 小さな小さな物語 ( 362 )

2012-08-01 15:15:36 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
旅人は大雪に見舞われ、西も東も分からなくなってしまいました。途方にくれているとすぐ前に一本の丸木のようなものが立っていました。旅人は、その木に馬を繋ぐと、あるったけの衣類などで身を守って寝てしまいました。そして、ぐっすりと眠った後目覚めますと、何と、旅人は教会の高い塔の上にいたのです。馬を繋いだのは、教会の塔の十字架の先端だったのです。
うろ覚えで申し訳ないのですが、これ、何のお話だったでしょうか。


落語にはこんな話もあります。
旅自慢のいい加減な男が、ご隠居さんに雪国への旅の話をするものです。
北国の冬は寒いので、何もかも凍らせてしまいます。そして、何もかも雪に覆われてしまいます。
秋の空っ風で森のあちこちで火災が発生しますが、ひとたび北風が吹きつけると、火事さえも凍ってしまいます。赤い炎もそのまま凍ってしまい、雪に覆われてしまいます。しかし、春になって雪解けの頃になりますと、あちらこちらから炎が活躍し始めるのです。
これも、正確に覚えているものではありませんので、ごめんなさい。


さて、今、北国は大雪で大変なようです。
その一方で、被災地も雪に覆われて、家も田畑も流されたあたりも雪に覆われて、実は何もなかったのではないかと錯覚してしまうような場所もあります。
春になって、雪が解けると、実は自分は大きな家に屋根に坐っていて、眼下の景色は昔のままで、あの大地震や大津波はやはり夢だったのだ・・・、と、切ない願いを抱く人も少なくないことでしょう。
しかし、現実は、雪が解ければ、凍りついていたが炎が燃えだすような、厳しい現実が待っています。


津波の傷跡も、地震の悪夢も、悲しい思い出までも、雪は覆ってくれるかもしれません。
一面の雪景色は、何もかも等しく覆い隠してはくれますが、ひとときの目隠しを与えてくれているにすぎません。やがて、雪解けとともに、避けることのできない現実が、浮かび上がってきます。
私たちは、意識的に、あるいは無意識のうちに、苦しいものに雪のようなものを被せてしまいます。
調子のよい言葉や、正義面した人々・・・、何を頼りにすればよいのか見分けの難しい今日には、雪のように、ほんのひとときだけ甘い思いをさせてくれるものがたくさんあります。
しかし、雪解けの下には、必ず現実があります。辛くとも、それを否定することは出来ません。

( 2012.01.31 )
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新しい社会モデルを ・ 小さな小さな物語 ( 363 )

2012-08-01 15:14:23 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
2060年には、わが国の人口は8,674万人になり、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が4割に達する・・・、という推計を国立社会保障・人口問題研究所が公表しました。
これを受けた新聞やテレビなどの報道や論評は、「ますます少子高齢化が進む」「何人で何人を支えることになる」「年金制度の存続がピンチ」「社会保障制度全体が厳しい運用を迫られる」等々、ここ何年も聞かされてきたのと同じような内容のものばかりでした。


この人口見通しなど、別に目新しいものでもなんでもありません。ほぼ同じような統計は何年も前から出ていますし、この研究所からは定期的に発表されています。
この研究所は、人口動向について、低位・中位・高位の三つのパターンを算出していて、今回公表されているものは中位のものです。ただ、その見通しは、たいてい公表数字より低位(人口減)の方向にぶれているように思われます。
それにしても、わが国が明確な人口減少社会に移っていながら、十年前と同じような意見が主流を成していることに大きな不安を感じます。
人口が減り、労働人口が減り、高齢者比率が高まる・・・、正確な数字はともかく、今時そんなことが分かっていない人などごく少数です。こんな発表などで、おたおたすることなど全くありませんが、未だに同じような意見しか聞かれないことに、おたおたするべきではないでしょうか。


五十年後、わが国は、「人口8,500万人、そのうち65歳以上の人が3,400万人」という国家になるのです。少々の誤差はあるとしても、これが現実なのです。
大変だ、大変だというのも結構ですが、現実の姿を大変だと騒いだり怖がっていたのでは話になりません。現実を見据えた対策を打っていかなくてはなりません。
人口が減るのがまずいと思うなら、人口を増やす方法を考えねばなりません。まさか、一夫多妻制というわけにはいかないでしょうから、移民を積極的に受け入れるのも一つの方法でしょう。
社会保障制度がもたないのであれば、根本的な改正が必要でしょう。現制度を手直しで対処していくのであれば、大幅な補償範囲の削減が必要になるでしょう。
どんな方法を取るにしても、そこからくる副作用は小さくないはずなので、慎重な対応を迫られることでしょう。


そして、何より大切なのは、何人で何人を支えるという現在の思考を捨て去ることでしょう。
その一つの方法は、高齢者の範囲の変更です。例えば、健康であれば誰でも75歳まで働ける社会を作り出せば、高齢者比率の概念は大きく変化するでしょう。
さらにこんな考え方も成り立つのではないでしょうか。つまり、一人一人が自分を支える社会モデルを構築することです。50年後の平均寿命は90年に近づくそうですから、例えば、最初の二十五年間は親や社会に養育される期間、成長後の四十年間は家族と自らの生活費と自分の引退後の費用を積み立てる期間、そしてその後の十年間は自分の生活費と社会に奉仕する期間、最後の十五年間はこれまでの蓄えと社会保障で生活する期間、とするのです。
つまり、世代間で支え合う仕組みから、個人の生涯で支える時と支えられる時を完結させる仕組みに社会を変えるのです。
どんな方法を取っても必要な資金に変わりがないと意見もあるでしょうが、例えば現行の年金制度を見ても分かるように、世代間で支え合うという制度は、人口減少社会では絶対に成立しないのです。現在の制度を続けて行けば、結局食い逃げ世代を作ってしまうことになり、ネズミ講に近いものになってしまいます。いえ、すでになりつつあります。
もう、ぼつぼつ本気で、私たちはそのことを認めなくてはならないのではないでしょうか。

( 2012.02.03 )


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コダック社に学ぶ ・ 小さな小さな物語 ( 364 )

2012-08-01 15:12:42 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
先月、米イーストマン・コダック社が、米連邦破産法11条を申請したというニュースが伝えられました。
この法律は、日本でいえば民事再生法に相当するものですが、二年前、米ゼネラル・モーターズ(GM)が行ったのと同じ申請です。
一口に倒産といっても様々な形態があるのでしょうが、いずれにしても、業績悪化による経営の行き詰まりには違いありません。


写真をフイルムカメラで覚えた年代にとっては、コダックは大変な存在でした。
企業としても、GMやGEやIBMなどと共に、米国大資本の象徴のように私などは感じておりました。
経営不振の原因は、デジタル化の波に遅れたためとされていますが、おそらくそんな単一の理由だけではないのでしょう。
解説の中には、苦境脱出を知的財産権の売却と人員整理で切り抜けようとして、新技術の開発などへの対応が手薄だったとしているものもあります。もしそうだとすれば、人員整理で企業を立て直そうとした場合、それが民主的な方法であればある程、有能な人材から去っていくという典型的な形だったのかもしれません。知的財産権(特許など)も全く同じで、売却できるものは経済的価値があるものであって、往々にしてそれらは、わが身を侵略してくるものになるのです。


ただ、米国という国のすばらしさは、リベンジが可能な国だということです。あのGMは、いくつかの幸運に恵まれたとはいえ、僅か二年で業績の立ち直りを見せ、昨年は販売台数世界第一位の地位を回復しているのです。
コダック社も、プリンター事業を中核にして復活を目指すそうですから、早期に健全な企業となって、世界に通じるコダック製品を開発して欲しいと願っています。


今回のコダック社の倒産に限ったことではありませんが、いかなる巨大企業も倒産するということを教えられました。
長い歴史を有していても、世界に冠たる技術を持っていても、有り余るほどの利益を上げていても、いずれも永遠に続くものではないというのが現実なのです。
わが国においても、まさかという企業が倒産し、他社に吸収されていきました。敗れて行く企業には、いろいろな原因があります。実に様々な原因がありそれらが絡み合っているのでしょうが、いずれにも共通するものもあります。それは、優れたトップに恵まれなかったことと、足を引っ張る社員が多過ぎたことです。
これは、企業に限ったことではなく、国家とて全く同じではないでしょうか。国家の倒産は、一企業の倒産とは形態が異なるでしょうが、悲惨な状況に陥る人の数は遥かに膨大となることでしょう。
いつまでも繁栄を続けるかに見えていても、企業であれ、国家であれ、賞味期限のようなものが決められているのです。もし、その期限を少しでも伸ばすためには、優れたリーダーシップを持つ指導者を手に入れるか、それが無理なら、社員や国民の相当の覚悟と努力が求められるのではないでしょうか。

( 2012.02.06 )
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冬枯れの庭 ・ 小さな小さな物語 ( 365 )

2012-08-01 15:11:38 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
わが家の小さな庭も、一人前に冬枯れの様相を呈しています。
この冬は、足の指先のしもやけがひどくて、その原因を考えてみますと、どうやら庭作業のような気がしたのです。私は、長靴を履いて作業するのですが、あまり動かない作業の時には足の冷たさを感じていたので、控えるようにしたのです。
可哀そうに、それでなくても貧弱な庭は、最低限の水を与えられる程度でほったらかしにされ、拗ねたようにしぼんでいます。


それでも、久しぶりにじっくりと見て回りますと、主は怠けていても、自然の営みはひるんだりしていません。
菜園の小さなダイコンは、「大根は小さくとも小根とはいわぬ」の実例のように、それなりに頑張っています。カブは、小カブと中カブの間を頑強に維持していますし、昨秋遅くに植えたコマツナとホウレンソウは、大きくならない代わり枯れもしないで、霜や氷雨と戦っています。
年末近くに、枯れかけて半値で売られていた苗を買ってきたタマネギは、どうやら育たないみたいですが、大半がまだ生きているみたいです。


草花は、パンジーやビオラはまあまあ花をつけていますが、わが家の主役のゼラニウムはどれもすっかり赤茶けて元気をなくしています。
スイセンはどこにこれほど球根があったと思われるほどたくさんの葉を出していますが、葉の数に比べて花の数が少ないのは毎年のことです。
それでも、ユリの新芽があちこちに見えますし、チューリップで芽を出しているものもあり、ムスカリや何の新芽だか分からないものもちらほら見えています。
三年目の小さな梅も、精一杯の蕾が目立つようになっています。キンカンだけは、毎年たくさんの実をつけるのですが、餌が少ないらしく雀たちが朝早くから啄ばみに来てくれています。


今日二月九日は、七十二候でいえば、立春の次候にあたります。「黄鶯睍」という説明がつけられていますが、「こうおうけんかんす」と読み、「鶯の初音が聞こえてくる頃」にあたるそうです。
雪の多い地方は、今年は特に大変なようで、鶯云々など実感がないことでしょうが、季節は少しずつ動いています。そして、私たちの日々も、一瞬として止まることなく動いています。
寒さが最も厳しい折ではありますが、顔をあげて歩くことにしましょう。

( 2012.02.09 )
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プロの技 ・ 小さな小さな物語 ( 366 )

2012-08-01 15:10:24 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
テレビで料理の番組を見ることがあります。私個人は、料理に特別興味があるわけではないのですが、ニュースを中心とした番組やいわゆるワイドショウ的な番組の中でも料理のコーナーがよく加えられています。
私が時々見るものでは、プロの料理人が、家庭で出来るようなものをスタジオで実演して見せるものがあるのですが、その中で「ここでプロの裏技を」などといったヒントを紹介するのです。スタジオのギャラリーたちは感心して見ていますが、おそらく紹介されたレシピをもとに作られる人も多いことでしょう。
でも、どうなんでしょうか。チャレンジ精神は称えるべきですが、なかなか同じようにはいかないのではないでしょうか。
教えられたように材料をそろえ、教えられたとおりの手順で、しかも裏技まで駆使して、それでいて、やはり、どこかが違うのですよね。
それが、プロの凄さではないでしょうか。


大分昔のことになりますが、スポーツでプロとアマの差が一番大きいのは何かという話を聞いたことがあります。
その時の答は「相撲」でした。
ゴルフは、プロの正式ツアーでアマが上位に入ったり優勝してしまうことがごくたまにですがあります。
プロ野球はといえば、ちょうどその頃、とても強い高校チームがあって、人気ばかり高くてからっきし弱いプロ球団に対して、どちらが強いかファンたちが真剣討議したという笑い話が紹介されていました。それは冗談だとしても、アマ球界のエースの多くが、プロにおいて即戦力になるのは現実のことです。
しかし、相撲は、そうはいかないそうです。大学であれ社会人であれ、そのチャンピオンを例えば大関の地位において本場所を実施した場合、優勝することはまず不可能だそうです。プロの横綱とアマのチャンピオンの差は歴然としているそうです。


プロといえば、私たちはついついスポーツなどの世界に目が行きますが、実はあらゆる分野に「これこそがプロ」といった人物や集団がいるのです。
炎の色で適格な温度を見分ける人がいるそうです。今時高精度のセンサーが設置できると思うのですが、膨大な全体を瞬時に察知する能力は、あらゆるコンピューター制御を上回るそうです。
超精密加工に於いても、ある名人の手を加えないことには生み出せないものがあるそうです。
建築や伝統工芸品の世界にも、そういう人物は少なくないのでしょう。


それでは、プロとアマとの差が最も少ない職業は何かと言いますと、それは「政治家」でしょう。
選挙という、とても神々しく、そしてとても危なっかしい制度のお陰で、プロを育てにくい職業になってしまいました。しかも、「一握りのプロ政治家の横暴を防ぐ」ことが重視され、「市民感覚の政治を」が錦の御旗になって行けば、当然プロ政治家は駆逐されていきます。
さらに、選挙の恐ろしいところは、選出されさえすれば誰でも同一の権限を持つということです。例えば、国会議員を見れば分かるように、アマより甘い人物であっても、選ばれてしまえば一人前の国会議員としてあらゆる権限を持ってしまうのです。
一国の政治が、一握りのプロ政治家によって牛耳られることは危険ですが、アマ集団で騒ぎ回る国家も、心豊かな国家をつくるのにはあまり適していないような気がしてならないのです。

( 2012.02.12 )
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魚心あれば ・ 小さな小さな物語 ( 367 )

2012-08-01 15:09:07 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
私はウォーキングが日課の一つになっているのですが、そのコースの一部は小中学生の通学路にあたっています。登下校の時間帯には、道路の角々に保護者の方などを中心に子供たちの安全のために誘導されています。
かつては、このような誘導者の目的の第一は、交通事故に対するものでした。現在でも、「交通安全」と染め抜かれた旗を持っていたりしますので、それも重要な役目に違いないのでしょうが、昨今の目的の第一は「防犯」のようです。
正確なデーターではないのですが、いつぞかの小学校への不審者乱入事件からは、そのような傾向に変わってきたように思います。
嫌な社会になったものだ、などと思いながら歩いていますと、少し先を、小学校低学年と思われる女の子がまだ若いお母さんと手をつないで学校に向かっていました。微笑ましい光景でありながら、嫌な世相のなせる技なのかなどと、よけいなことを考えながら観察するともなく見ていました、


すると、その若いお母さんが、少し声を大きくして子供に呼び掛けました。
「うおごころあれば?」
私は少々驚きました。まだ若い母親が幼い子供に問いかけたのですよ。私は驚くとともに俄然興味がわいてきて、二人との距離を詰めました。
「みずごころ」
幼い子供は、さらりと答えました。どうやら、学校で「いろはかるた」のようなものを習っているらしいのです。
「『ごころ』って、『こころ』のことよ、ね」と、子供はさらに続けました。
「そうよ」と、お母さん。
「『うおごころあれば、みずごころ」って、どういうこと?」と、子供。お母さんの答えに、私の期待は高まります。
「そうねぇ・・・。お魚に心があれば、ね・・・。学校ではどう習ったの?」と、お母さんは逃げの構えです。
「お魚に心があれば、水にも心があるんだって・・・。何のことだか、わかんない」
「それで良いと思うけど・・・。つまり、ね・・・」
子供は、もっと具体的で実感できる答えを期待していて、若い母親は、男女の仲のことを連想し言葉に詰まっている様子です。
子供はなおせがんでいるようですが、校門が近づき、警備や誘導にあたっている人が何人もいます。私は、その子供以上に母親の答えが気になりますが、これ以上ついて行けば、ストーカー扱いされそうなので残念ながら離れざるを得ませんでした。


家に帰ると、早速広辞苑を開いてみました。
『魚心あれば水心』の意味は、(「魚に心あれば、水にもそれに応ずる心があるの意。もと「魚、心あれば、水、心あり」の形だったもの)相手が好意を持てば、こちらもそれに応ずる用意があることにいう。
と、あります。
つまり、本来の意味は、子供さんが学校で習ったという方が本来の意味に近く、お母さんが多分連想したと思う方は、一般的に用いられている形ですが、付随して定着した意味のようです。


そして、現在では、男女の仲について用いられる場合でも、あまり良い意味では使われないような気がします。つまり、純愛小説では使われないような性格のように思うのです。
本来の意味からすれば、「阿吽の呼吸」に近い言葉だと思うのですが、現在では、男女の仲に限らず、政治や経済や仲間内の間でも、清廉潔白な関係の中では、あまり使われないようです。どちらかといえば、悪代官の台詞を連想してしまうような感じがしてしまうのです。
「お互いがお互いの心を大切にし、そして相手をおもんばかる・・・」そんな気持ちは私たちの生活においてとても大切だと思うのですが、本来ならそのような意味に育つべき『魚心あれば水心』という言葉が、現在のような使われ方になったところに、私たちの心の貧しさの一端が覗いているような気がするのです。

( 2012.02.15 )
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デフレ克服 ・ 小さな小さな物語 ( 368 )

2012-08-01 15:07:51 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
このほど日銀は、「当面、消費者物価指数で前年比1%上昇を目指す」という方針を決め、実質的にインフレ目標の設定を採用しました。
インフレ目標については、これまでも多くの学者や評論家が提唱したり、反対意見を述べたりしてきています。日本人に限らないのでしょうが、第二次世界大戦後の敗戦国における凄まじいインフレの状態は、今も多くの人の記憶に残っており、特に各界の長老といわれる人たちの呪縛を解き放つことは難しいらしく、日銀としてはなかなか公言することが出来なかったのでしょう。
せめて、もう十年ほど前に踏み切ることが出来ていれば、わが国経済も少し違う動きを見せていたはずです。


それでも、何もしないよりは対策を打ち出してくれたことを評価すべきなのでしょう。
この二十年ばかりのわが国の経済力の衰退ぶりは、目を覆うばかりで、政府にその気力も能力も乏しいとすれば、せめて日銀だけでも頑張ってほしいものです。
しかし、ケチをつけるわけではありませんが、今回の施策で大見えを切るほどの成果を上げることは可能なのでしょうか。
今回の対策は、要は、「国債などを買い入れる基金の枠を10兆円拡大する(現行55兆円)」というもので、追加金融緩和も推進して、デフレ脱却を目指すというものです。
ただ、すでに日銀の金利は実質「0%」になっているわけで、心理的な面を除けば果たしてどの程度の効果が期待できるのでしょうか。


「デフレだ」「デフレスパイラルだ」と、経済不振のすべてがデフレにあるような論調がありますが、本当にそうなのでしょうか。
もっと、根源的な部分を勇気をもって見つめて行く必要があるのではないでしょうか。
例えば、国内で自動車の販売が不振ですが、国民の収入が減ったからなのでしょうか。その部分もあるかもしれませんが、一番の原因は、自動車を必要とする人の数が減っていることなのです。その他の商品の多くが、この現実をもっと冷静に見るべきです。
物価が下がった下がったと言いますが、わが国は鎖国をしているわけではないのです。物価を「ドル」で評価してみた場合も、本当にそんなに下がっているのでしょうか。


確かに「デフレ克服」も重要な事なのでしょう。
しかし、現在のわが国にとって最も重要な課題は、職場の確保なのです。働く意欲のある人なら、生活の維持が可能な収入を得ることができる職場が用意されている社会を構築することなのです。
海外から安くて良質な商品が入って来るのなら、それは私たちの生活に貢献してくれます。同時に、わが国からも、他国が価値を認めてくれる商品を輸出しないことには国家は成り立ちません。
多くの企業が研究し努力を続けていることでしょうが、今こそ売らなければならない商品を、私たちは封印してきているのです。それは、「円」です。
日銀は10兆円の資金を用意するそうですが、そんなことで大した効果があるはずがありません。毎月10兆円の「円」を輸出するのです。それでドル紙幣を買う必要などありません。海外の資源や企業に投資し、わが国の資源開発につぎ込むことも必要でしょう。わが国にもその気にさえなれば開発すべき資源はたっぷりあるのですから。
「その資金はどうすのか?」ですか。お札を刷ればいいのです。どんどん、どんどん刷ればいいのです。
おそらく、3年もしないうちに円安で大変な事態になるかもしれませんが、そうなると輸出企業が頑張ってくれますから、意外にその程度では大した円安にはならないかもしれませんよ。
国内生産は堅調になり、投資収益が国家財政を救うと思うのですが、この話、無茶ですか?

( 2012.02.18 )
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