雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

時奏する

2014-05-04 11:00:19 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百七十二段  時奏する

時奏するいみじうをかし。
いみじう寒き夜半ばかりなど、こほこほとこほめき、沓すり来て、弦うち鳴らして、
「何の某、時丑三つ、子四つ」
など、はるかなる声に言ひて、時の杭さす音など、いみじうをかし。
「子九つ、丑八つ」
などぞ、里びたる人はいふ。
すべて、何も何も、ただ四つのみぞ、杭にはさしける。


時刻を奏する様子は、とても興味深いものです。
たいそう寒い夜中などに、こぼこぼと音をたてて、沓をすりながら来て、弓弦を打ち鳴らしてから、
「何々の某、時、丑三つ」
「何々の某、時、子四つ」
などと、遠くからでも聞き取れる声で言い、時の杭をさす音なども、とても情緒があります。
「子九つ」
「丑八つ」
などのように、里の人などは「子の刻」という代わりに鼓の数を加えて言う。
すべて、どの時間でも、鼓を打つ数は刻限によりますが、挿していく簡(フダ)は、四つ分だけを挿すようです。



夜中でも、担当の近衛舎人が一刻ごとに、大きな声で官職姓名と共に時刻を告げていました。「時奏する」ということですから、宮中全体に時間を知らせるというより、天皇に申し上げているということだったのでしょう。
少納言さまの時代、庶民の間でも、単に太陽の高さなどばかりでなく、時刻というものがかなり意識されていたみたいです。
ただ、最後の部分は、どういうことなのかよく分かりません
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする