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雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

男というものは

2017-07-19 08:18:22 | 麗しの枕草子物語
           麗しの枕草子物語

               男というものは

至れり尽くせりで婿を迎えたのに、すぐに通って来なくなった婿が、舅と出会った時には「悪いことをした」と少しは思うものなのでしょうか。

ある男が、とても羽振りのよい有力者の婿になったのに、ほんのひと月も経たないうちに通って来なくなってしまったので、娘の邸では男の不実を言い募り、娘の乳母などは呪いをかけるほどだというのに、その翌年の一月、その婿が蔵人に昇任したのですよ。
「驚いたなあ。あの有力者の娘にあれほどの仕打ちをしているのだから、昇任など考えられない」
などと、世間で噂されているのは、当人も耳にしていることでしょうよ。

六月になって、ある御方が法華八講を催され、多勢の方々がお説教を聞きに集まりました。
その時、蔵人に昇任したあの婿が、表袴・黒半臂(オモテハカマ・クロハンピ)などたいそう美々しく着飾って、置き去りにした妻の牛車に接触してしまいそうな位置に立っているのを、
「車中の妻はどのような気持ちで見ているのだろう」
と、親しい人たちは同情し、それほどでもない人たちも、
「あの男、よくも平気で居れるものだ」
などと、あとあとまで噂したものですわ。

まあ、男などというものは、思いやりとか、他人の思惑などには、無頓着なように出来ているのでしょうが・・・。


(第二百四十八段・いみじう仕立てて・・、より)
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