雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ゴーストライター ・ 小さな小さな物語 ( 605 )

2014-09-05 10:15:33 | 小さな小さな物語 第十一部
脚光を浴びていた作曲家が実はとんでもない人物だったらしい、ということが話題になっています。
ゴーストライターの存在は、どの世界でもそれほど珍しいことではないようですから、どうってことはないのですが、今回話題の人物については、報道されているものがある程度事実だとすれば、そして本人が弁明している部分が相当部分事実だとしても、かなり悪質というか、かなりレベルの高い仕掛け人のような気がしています。
不愉快な問題なので、出来るだけ触れないでおこうと思っていたのですが、ゴーストライターだけの問題でもないようなので、テレビと週刊誌の報道をベースに意見を述べさせていただきます。

この問題が表面化した時、実は私はこの人物を全く知らなかったものですから、ゴーストライターの存在が明らかになったと報道されても、「たぶんお金の問題でトラぶったんだろうな」という程度の興味しかありませんでした。
その後、広島や東北の被災地との関わりについて報道されるようになって、「ああ、そんな話を聞いたことがあるな」という漠然とした記憶から興味がわき、最近は、テレビ報道をむさぼるように見ていました。

今回の騒動の当人たちにどれだけの罪があるのか知らないのですが、法律上・道義上の両面で無実ということはない気がします。然るべき対処がなされると思いますが、道義面については、当人がその気にならなければ、周囲でいくら騒いでもどうにもならないことでしょう。
それともう一つは、当人たち以外の問題があります。
そもそも、今回のような腹立たしい状況を生み出したのには、報道機関の責任は小さくないと思われます。彼らの曲を本当に素晴らしいと感じたのか、眉に唾しながら構成を練ったのかは知りませんが、結局は、寄ってたかって壮大なドラマを作り上げてしまったのですから、その責任は当人たちよりも大きいかもしれません。
これまでに、彼らの片棒を担いだような形になっている報道機関や評論家と称する人たちは、かつての報道や発言について、その真意を公表する義務があるように思うのです。

いずれにしても、「ゴーストライター云々」そのものは、大したことでもありますまい。ありふれた、ごく低俗なレベルの問題だと思うのです。
ただ今回の場合は、被災とか障害だとか、人間の心理の弱みのようなところに付け込んでいる辺りが、極めて不愉快なのです。
一見して詐欺師に見える詐欺師などいないわけですし、ゴーストライターが依頼主より優れた才能であるのは当然のことです。
古今東西、音楽・文学・絵画はもちろん、「何々の壺」とか「誰々作」などとされているものの中に、贋作が数多く混入しているらしいことは、その道の専門家から見れば常識らしいのです。「虎徹」とされる刀剣など、まず贋作だと思って鑑定にあたらなければならないのだと、何かの記事で見た記憶があります。
まあ、映画であれ、ドラマであれ、小説であれ、人間心理の弱みに付け込んで「ウケ」を狙っている部分は否定できないのですから、今回の騒動も、「ドキュメント」と名付けられた「ウケ」狙いだったのだと、苦笑いでもするのが大人の対応かもしれませんなぁ。

( 2014.03.12 )

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