雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

あるかなしか ・ 小さな小さな物語 ( 606 )

2014-09-05 10:13:56 | 小さな小さな物語 第十一部
あるテレビ報道の中で、幼い子供さんがまだ咲き始めたばかりの梅の花に近づいて、「ママ、いい匂いがするよ」と言って親のもとに駆け戻りました。「そお」とばかりに笑顔で答えた母親に対して、その子供さんはさらに言葉を続けました。「梅干しの味がする・・」
これは、ニュース番組の中だったと思うのですが、季節の話題を紹介する形で報道されたものですが、私は、思わず笑ってしまいました。同時に、何だか嬉しくて、春の香りをお相伴させてもらったような気持になりました。

ほんの少しばかりの、咲き始めたばかりの、それこそ「あるかなしか」の梅の香りを感じ取って、自分の最もなじみのある香りに結び付けたお嬢ちゃんの感性に拍手を送りたいような気持になりました。
「隠し味」という言葉があります。おそらく料理から生まれた言葉だと思うのですが、 ほんの少しばかりの、「あるかなしか」のスパイスなどを加えることによって、料理全体を美味なものに仕上げる働きをするものを指すのでしょうが、この言葉はほかの場面でも引用されることが時々あります。
一つの組織や、一つの作業などには、「あるかなしか」の工夫や人柄が微妙な働きをしていることはよくあることです。

強烈なリーダーシップや、価値が明確なものや、真偽がはっきりしているものなどは、だれでもその良し悪しを判断できます。
しかし、私たちの日常生活は、そのような白黒がはっきりしていることばかりで成り立っているわけではありません。ある人にとって良いことは、ある人にとって都合の悪いことであることは、よく経験することです。商品やサービスの良し悪しも、それぞれに大きな差があることなどはむしろ珍しくて、「あるかなしか」の微妙な差によって大きく選別されることが極めて多いものです。

世紀の大発見とされた「STAP細胞」がピンチのようです。
発表論文にいくつかの問題があるようで、論文撤回という話さえ出てきているようです。
大いに期待を寄せていただけに残念な気持ちが強いのですが、報道を見ている限り、もう少し問題を整理する必要があるようにも思われます。
論文の一部に問題があることは事実のようですから、訂正あるいは撤回は必要なのでしょうが、そのことと「STAP細胞」の存在有無についての問題は、区別して判断すべきだと思うのです。
実際に存在しているのか、混入などの判断ミスがあったのか、全く存在していないのか、研究スタッフには明らかにする責任があるでしょうが、「論文通りにやっても再現できない」だけを理由に騒ぎ立てるのは控えてほしいものです。
まるで「せんべいでも焼くように」ごく簡単に生み出すことができるような発表の仕方にも問題があったのでしょうが、「あるかなしか」のわずかな可能性にかけて積み重ねてきた研究成果を、誰もがそうそう簡単に再現できないのは、むしろ当然のように思われます。
予想されたように、弱みが表面化してきた人や事柄に対して、棒を持って追い回すような現象が表面化してきていますが、ここは、研究スタッフの再現確認を待ってから、素人は再評価すればいいのではないでしょうか。
「『STAP細胞』がんばれ」

( 2014.03.15 )

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