( 1-3 )
「土地改良資産につきましてはすでに説明させていただきましたが、この項目に対しては減価償却引当金は計上されていません。
この項目も若干ご理解いただきにくい面があると思います。例えば、新しく道路を拡張させたり農園を拓いた場合には、それに要した費用が土地改良資産として計上されますが、損耗などで修理したり、街路樹を植え替えたりする場合は、経費として処理されています。金額の如何に関わらずです。
その結果、例えば農園について説明させていただきますと、同じ金額として計上されている場合でも、あるものはその後に改善のための資金が投入され、あるものは一部に損耗が見られても使用に不便がないためそのままになっていても、いつまでたってもどちらも同額の資産になっています。このあたりの処理については何度か検討されてきていますが、現在のところこういった処理が継続されてきています。
設備資産の約百五十億バウには、電力、通信、上下水道、コンピューターシステムなどの設備が含まれています。その下にカッコ書きされている四十億バウ余りは、やはり減価償却引当金です。設備資産の中で大きな比重を占めておりますのは、電力設備と上下水道の設備で、全体の八割ほどを占めています。
電力設備の主体は太陽光発電システムに関わるものです。私たちの国のエネルギーはその殆どが電力で賄われています。すべて太陽光発電システムにより産み出されているもので、この数年は余剰電力の売却分で上水道用として州政府より購入している水代を上回るようになっています。
私たちの国の全ての建物や通路などの屋根は発電用パネルで覆われています。太陽光による発電コストは、依然他のシステムに比べて割高ではありますが、私たちは創立当初からS社の全面的な協力を得ていて、母国全体を見ましても、S社のモデル事業といわれるほど最先端を走っています。
上水道は、全て州政府から購入していますが、実質的には隣接市から供給を受けていることになります。
下水道は国内で運営しています。ゴミの焼却を含め、私たちの国内から汚水やごみなどの廃棄物を出さなくなってすでに何年にもなります。
但し、母国のリサイクル法に基づく物や、再生資源として売却または無償引き取りして貰える物、一部の医療廃棄物などは除きますが。
コンピューター関係は、入出国管理局で使われているものなど汎用性の少ない特殊なものに限られ、大半はリースや利用料で対処しています。従いまして、資産として計上されているものはごく僅かです。通信システムも同様です。
もちろん、リース契約されているものなどは、実質的には借入金とあまり変わらない性質もありますので、決算報告や母国政府への提出資料には詳細が添付されていますが、ここでは省略させていただきます。
その次にある機器車両等の六十億バウに含まれるものとしましては、医療用機器の割合が一番大きく、車両がそれに次ぎます。医療用機器のうち概ね一千万バウ程度以上で五年以上使用可能なものを資産計上していまして、それ以外の物は購入時の経費として処理をし、物品の管理はそれぞれの担当部門で行っています。車両についても、国外で使用する車両、つまり母国に車両として登録されているものだけが資産とすることになっています。当国内でたくさん見受けられる小型の電気自動車はもちろん、大型の乗り合いバスも購入時の経費処理になっています。
ついでに、資産の分類の仕方について若干補足させていただきましょう。
母国経理と一番違うところは、私たちの国では建物と一体になっているものは全て建物として区分けされます。例えば、エレベーターなども私たちの国では建物になっています。つまり、私たちの国では、減価償却や経費処理について税務上の配慮は全く必要ありませんので、可能な限り購入年度の経費として処理するようにしています。
但し、純然たる消耗品以外は備品として管理されるものですから、それぞれの担当部署での備品管理は相当重要な事務とされています。
そして、これらとは少し性格の違うものはその他資産と処理されています。
金額の大きなものとしては、私たちの国との取引などで関係の深い会社などへの出資金などがあります。例えば、K電力、M銀行、太陽光発電システムのS社、小売業のK社、T建設、H病院、隣接市の水道事業債券、などがあります。
以上、駆け足でご説明させていただきました全てを合計しました一千五百四十億バウと預金等の九百二十六億バウを加えたもの、すなわち二千四百六十六億バウが私たちの国テスバウ共和国の総資産ということになります。
但し、この数字には、建物などの損耗などによる減価分は考慮されていません。減価償却費としてカッコ書きされている五百二十億バウは預金等の中に含まれていますので、この分を差し引いた額が実際の資産価値に近いのかもしれません」
「さて、それでは、この二千四百六十六億バウという資産を、私たちの国はどのような方法で調達しているかを簡単にご説明いたしましょう。
まず最初は、基本財団として計上しています一千億バウです。これは、設立にあたった人たちが出資金として集めたものです。実際は寄付金と同じような性格なのですが、設立当初は、確か二年間ほどだったそうですが、出資金として出資された方々に国家運営の決定などの権限が与えられていたそうです。現在でも出資者の権限と責任で運営されている団体が多いのですが、私たちの国テスバウ共和国は、早い段階で出資金と寄付金を合算させて基本財団とし、設立に奔走された方々や資金提供をしてくれた方々は、出資金による国家運営への関与を放棄されました。従いまして、私たちの国は早い段階から全市民から選ばれる代議員による国家運営が行われてきたのです。
私たちの国が、いかなる団体や個人の影響を受けることなく、本当の意味での共和国として運営を続けることが出来ているのは、設立当初に、この巨額の資金を基本財団という形で無償提供して下さった方々があったからなのです。
その次にあります追加財団として計上されています六百億バウ余りの資金は、その後寄付金として寄せられたものです。基本財団と何ら性格の異ならない資金ですが、設立当初の資金と区分けされています。
この資金は、かつてこの国を終の棲家として生活された私たちの先輩たちが、その遺産を寄贈されたものが集積されたものなのです。
利益積立金の百五十億バウは、毎年の決算における剰余金の中から組み込まれたものです。利益積立金につきましては、誤解の無いよう少々ご説明いたします。
私たちの国は共和国として運営しているわけですから、市民から徴収した資金で国家の財政運営がなされなくてはなりません。同時に、その徴収した資金を剰余金として国家が吸い上げることも良いことではありません。当然私たちの国はその基本に従って運営されています。
その仕組みにつきましては、後ほどもう少し詳しく説明させていただきますが、私たちの国家の収入には、市民から徴収する資金の他に、母国政府からの補助金、預金などの利子収入、国外の方から受ける寄付金、それと事業収入があります。
このうち、利子収入と寄付収入については、必ずしもこの期間に在住している市民が受けるべきものとはいえない、というのが私たちの国としての考え方なのです。
この考え方から、利子収入と国外善意の方々からの寄付金の半額以上を利益積立金として処理することにしているのです。
当然毎年の決算では不足金なり剰余金なりが発生します。剰余金は次期繰越金とし、不足金は前期からの繰越金で処理することとし、それでもなお不足の場合は、常任委員会の許可を得て利益積立金を取り崩すことになっていますが、幸いこの十年はそのようなことはありません。
ここまでの三項目の合計、一千七百五十億バウ余りが私たちの国テスバウ共和国の純資産として公表しています。
ここでは詳しい説明は致しませんが、この他に市民預り金、次期繰越金、共済会などの各部門の剰余金、減価償却引当金の一部なども純資産ではないかと、母国の監督官庁からは指摘されていますが、それらはあくまでもそれぞれの用途の変動に備えるべきものだと私たちの国は考えています。
「土地改良資産につきましてはすでに説明させていただきましたが、この項目に対しては減価償却引当金は計上されていません。
この項目も若干ご理解いただきにくい面があると思います。例えば、新しく道路を拡張させたり農園を拓いた場合には、それに要した費用が土地改良資産として計上されますが、損耗などで修理したり、街路樹を植え替えたりする場合は、経費として処理されています。金額の如何に関わらずです。
その結果、例えば農園について説明させていただきますと、同じ金額として計上されている場合でも、あるものはその後に改善のための資金が投入され、あるものは一部に損耗が見られても使用に不便がないためそのままになっていても、いつまでたってもどちらも同額の資産になっています。このあたりの処理については何度か検討されてきていますが、現在のところこういった処理が継続されてきています。
設備資産の約百五十億バウには、電力、通信、上下水道、コンピューターシステムなどの設備が含まれています。その下にカッコ書きされている四十億バウ余りは、やはり減価償却引当金です。設備資産の中で大きな比重を占めておりますのは、電力設備と上下水道の設備で、全体の八割ほどを占めています。
電力設備の主体は太陽光発電システムに関わるものです。私たちの国のエネルギーはその殆どが電力で賄われています。すべて太陽光発電システムにより産み出されているもので、この数年は余剰電力の売却分で上水道用として州政府より購入している水代を上回るようになっています。
私たちの国の全ての建物や通路などの屋根は発電用パネルで覆われています。太陽光による発電コストは、依然他のシステムに比べて割高ではありますが、私たちは創立当初からS社の全面的な協力を得ていて、母国全体を見ましても、S社のモデル事業といわれるほど最先端を走っています。
上水道は、全て州政府から購入していますが、実質的には隣接市から供給を受けていることになります。
下水道は国内で運営しています。ゴミの焼却を含め、私たちの国内から汚水やごみなどの廃棄物を出さなくなってすでに何年にもなります。
但し、母国のリサイクル法に基づく物や、再生資源として売却または無償引き取りして貰える物、一部の医療廃棄物などは除きますが。
コンピューター関係は、入出国管理局で使われているものなど汎用性の少ない特殊なものに限られ、大半はリースや利用料で対処しています。従いまして、資産として計上されているものはごく僅かです。通信システムも同様です。
もちろん、リース契約されているものなどは、実質的には借入金とあまり変わらない性質もありますので、決算報告や母国政府への提出資料には詳細が添付されていますが、ここでは省略させていただきます。
その次にある機器車両等の六十億バウに含まれるものとしましては、医療用機器の割合が一番大きく、車両がそれに次ぎます。医療用機器のうち概ね一千万バウ程度以上で五年以上使用可能なものを資産計上していまして、それ以外の物は購入時の経費として処理をし、物品の管理はそれぞれの担当部門で行っています。車両についても、国外で使用する車両、つまり母国に車両として登録されているものだけが資産とすることになっています。当国内でたくさん見受けられる小型の電気自動車はもちろん、大型の乗り合いバスも購入時の経費処理になっています。
ついでに、資産の分類の仕方について若干補足させていただきましょう。
母国経理と一番違うところは、私たちの国では建物と一体になっているものは全て建物として区分けされます。例えば、エレベーターなども私たちの国では建物になっています。つまり、私たちの国では、減価償却や経費処理について税務上の配慮は全く必要ありませんので、可能な限り購入年度の経費として処理するようにしています。
但し、純然たる消耗品以外は備品として管理されるものですから、それぞれの担当部署での備品管理は相当重要な事務とされています。
そして、これらとは少し性格の違うものはその他資産と処理されています。
金額の大きなものとしては、私たちの国との取引などで関係の深い会社などへの出資金などがあります。例えば、K電力、M銀行、太陽光発電システムのS社、小売業のK社、T建設、H病院、隣接市の水道事業債券、などがあります。
以上、駆け足でご説明させていただきました全てを合計しました一千五百四十億バウと預金等の九百二十六億バウを加えたもの、すなわち二千四百六十六億バウが私たちの国テスバウ共和国の総資産ということになります。
但し、この数字には、建物などの損耗などによる減価分は考慮されていません。減価償却費としてカッコ書きされている五百二十億バウは預金等の中に含まれていますので、この分を差し引いた額が実際の資産価値に近いのかもしれません」
「さて、それでは、この二千四百六十六億バウという資産を、私たちの国はどのような方法で調達しているかを簡単にご説明いたしましょう。
まず最初は、基本財団として計上しています一千億バウです。これは、設立にあたった人たちが出資金として集めたものです。実際は寄付金と同じような性格なのですが、設立当初は、確か二年間ほどだったそうですが、出資金として出資された方々に国家運営の決定などの権限が与えられていたそうです。現在でも出資者の権限と責任で運営されている団体が多いのですが、私たちの国テスバウ共和国は、早い段階で出資金と寄付金を合算させて基本財団とし、設立に奔走された方々や資金提供をしてくれた方々は、出資金による国家運営への関与を放棄されました。従いまして、私たちの国は早い段階から全市民から選ばれる代議員による国家運営が行われてきたのです。
私たちの国が、いかなる団体や個人の影響を受けることなく、本当の意味での共和国として運営を続けることが出来ているのは、設立当初に、この巨額の資金を基本財団という形で無償提供して下さった方々があったからなのです。
その次にあります追加財団として計上されています六百億バウ余りの資金は、その後寄付金として寄せられたものです。基本財団と何ら性格の異ならない資金ですが、設立当初の資金と区分けされています。
この資金は、かつてこの国を終の棲家として生活された私たちの先輩たちが、その遺産を寄贈されたものが集積されたものなのです。
利益積立金の百五十億バウは、毎年の決算における剰余金の中から組み込まれたものです。利益積立金につきましては、誤解の無いよう少々ご説明いたします。
私たちの国は共和国として運営しているわけですから、市民から徴収した資金で国家の財政運営がなされなくてはなりません。同時に、その徴収した資金を剰余金として国家が吸い上げることも良いことではありません。当然私たちの国はその基本に従って運営されています。
その仕組みにつきましては、後ほどもう少し詳しく説明させていただきますが、私たちの国家の収入には、市民から徴収する資金の他に、母国政府からの補助金、預金などの利子収入、国外の方から受ける寄付金、それと事業収入があります。
このうち、利子収入と寄付収入については、必ずしもこの期間に在住している市民が受けるべきものとはいえない、というのが私たちの国としての考え方なのです。
この考え方から、利子収入と国外善意の方々からの寄付金の半額以上を利益積立金として処理することにしているのです。
当然毎年の決算では不足金なり剰余金なりが発生します。剰余金は次期繰越金とし、不足金は前期からの繰越金で処理することとし、それでもなお不足の場合は、常任委員会の許可を得て利益積立金を取り崩すことになっていますが、幸いこの十年はそのようなことはありません。
ここまでの三項目の合計、一千七百五十億バウ余りが私たちの国テスバウ共和国の純資産として公表しています。
ここでは詳しい説明は致しませんが、この他に市民預り金、次期繰越金、共済会などの各部門の剰余金、減価償却引当金の一部なども純資産ではないかと、母国の監督官庁からは指摘されていますが、それらはあくまでもそれぞれの用途の変動に備えるべきものだと私たちの国は考えています。