マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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誓多林八柱神社チョウナハジメ

2011年12月19日 06時45分53秒 | 民俗あれこれ(ゾーク事業)
早朝に降っていた雨がやんだ奈良市誓多林。

この日は20年に一度の八柱神社の造営事業の始めの儀式が行われる。

大和では造営のことをゾークと呼ばれることが多い。

当地でもそうだった。

祀るスサノオのミコトには八人の王子がいた。

スモウの行事もあるからタジカラオノミコトの神社でもあると氏子らが話す八柱神社。

明治四十年十月に建之された燈籠にはそのことを示す「八王子 村中安全」の名が刻まれている。



神社に集まったのは造営委員や六人衆たち。

造営を始めるにあたり大工棟梁も加わって起工式が行われる。

棟梁は春日大社や有名大寺などの文化財建築にも携わっている尾田組の大工さん。

創業以来匠の技を現代に活かす名高い宮大工である。

宮司による祓いの儀、降神の儀、献饌、祝詞奏上を経て棟梁が登場した。

テーブルにはヤリガンナ(槍鉋)、チョウナ(手斧)、サシガネ、スミツボ、スミサシが並べられている。

造営を始めるにあたり、最初に行われる大工さんの儀式である。

先月の秋祭りには土俵があった境内。そこに棟木が置かれている。



そこへ移動した棟梁。

手にはサシガネ(指金)とスミツボ(墨壺)、スミサシ(墨指)がある。

まずはサシガネとスミサシを用いて寸法を測る。

そして繰りだしたスミツボの糸線をピンと張る。

それは跳ねるような作法で、一筋の直線が描かれた墨打ちの儀であった。

その次も棟梁の儀式だ。



チョウナと呼ばれる手斧。

村の人はそれをチョンナと呼んでいた。

手斧を手にした棟梁は棟木に向かって「トン、トン、トン エイ」と手斧を振りおろして木に当てる。

それは3回もされて最後の「エイ」で力強く降りおろして木を削った。

「エイ」は「永」の字を充てるという手斧始めの儀式である。

「せんざい(千歳)、まんざい(万歳)、えいえい(永々)」の目出度い詞が発せられる槌打ちの儀は行われなかったが、手斧の儀は造営を始めるにあたって千年、万年と末永く社殿が建っているようにという願いが込められている。

こうして儀式を終えた人たちは社務所で工事の無事を願って直会が行われた。

(H23.11. 3 EOS40D撮影)