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著者あとがきに“文字にすると差しさわりのある部分もあるので、もともとは後輩の警察官の参考にと考えていたが、裁判員制度も始まるに当たって、捜査官だけでなく普通の人にもテレビや小説、報道で紹介されるものとは、一味違った「本物の捜査」の一端を感じて欲しいと思うに至った次第である”と書かれてあるように、読んでいて警察官が参考にするには格好の本である。
それに警察小説を書こうとすれば参考にもなるだろう。ただ、あまり捜査の具体的な記述は、悪用の危険があるため避けられている。
例えば、科学捜査の具体的記述はない。調書の書き方すら具体的でない。それに、マニュアル本と割り切れば納得できるが、一般の人にも対象を広げるのであれば、もう少し記述に工夫があってもよかったのではないか。
つまり、読み物としての面白さを加味するということだ。こういう堅い本なればこそ、すこし遊びがあってもいいと思う。
とはいうものの“事件現場に行ったときに、署の刑事、地域警察官、本部からは主管課だけでなく、現場鑑識、機動捜査隊が来ている。自分の所属のことならともかく、臨場警察官がそれぞれ、具体的に何をどうやったかを掌握しなくてはならない”というのが捜査指揮官の立場のようだ。
これらは企業のトップや部、課にいたる責任者にも共通の問題だろう。この本は、警察官ばかりでなく、一般企業にも参考になる点が評価されてよい。
ふと思ったが、わたしはアメリカン・ミステリをよく読むが、ある事件をまとめる立場の捜査指揮官を主人公にした本を読んだ記憶がない。ほとんど刑事や検事個人が多かったように思う。小説にするには地味な存在なのか。
著者は、昭和23年(1948年)生れ。昭和47年(1972年)警察庁入庁。千葉・兵庫県警察本部刑事部長、警察庁鑑識課長、科学警察研究所総務部長、警察庁刑事企画課長、警察大学校特別捜査幹部研修所長、警察庁暴力団対策部長、警察庁刑事局長など、刑事警察の要職を歴任。そのほか、警視庁神田警察署長、山口県警察本部長、兵庫県警察本部長、警視庁副総監などで指揮を執った。