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ウィリアム・ランデイ「ボストン・シャドウ」

2008-09-09 13:04:26 | 読書

              
 1963年と1964年前半は、流血の時代だった。アメリカ国民にとっては、ボストン出身のケネディ大統領暗殺事件が心に暗い影を投げかけ、ここボストンではストラングラー(絞殺魔事件)で人々を震え上がらせていた。
 その一方で、古びてみすぼらしい地区のボストン再生事業が行われていた。アイルランド系のデイリー家には、成人した三人の息子がいた。結婚して一児の父で警官の長男ジョー・デイリー、ハーヴァード大出の検察官の次男マイケル、三男のリッキーは自由業といっているが、実は腕のいい空き巣狙いだった。
 ギャングに取り込まれた警官のジョー。空き巣で得たダイヤモンドのせいでギャングに追われるリッキー。ストラングラーに見せかけて殺されたリッキーの恋人。 本物のストラングラーに襲われた母親マーガレット。ボストン再生事業の裏で暗躍するマフィアといった錯綜するストーリーが織り成す人間模様に、どこか暗さをはらみながら収斂していく。ジェイムズ・エルロイのクライム・ノベルを思い出した。
 著者は、生粋のボストン子でイェール大学とボストン大学ロー・スクールで学位を取得後、六年間検事補として公職に就いた。その後、2003年に「ボストン、沈黙の街」を発表し作家デビュー。同書は英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞に輝き一躍脚光を浴びた。