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映画「その土曜日7時58分(‘07)」

2010-02-13 13:06:46 | 映画

 80歳を過ぎたシドニー・ルメットが、なんともエネルギッシュな映画を撮った。これから観る人のために細かいことは言わないが、オープニングの官能に目が離せない筈。
 人生どこでどう間違うのか。それに家族の愛とか夫婦愛も、砂上の楼閣のように壊れやすいもの。マリワナと銃の暴力によって、こなごなに砕かれる。
 題名の「その土曜日7時58分」というのは、両親が経営する宝石店がオープンする午前8時少し前を指している。兄弟は金に困っていた。兄アンディ・ハンソン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、マリワナのせいで、弟ハンク(イーサン・ホーク)は、離婚していて養育費の支払いに困っている。
 兄が両親の店を襲撃する計画を提案する。勝手知ったる店内、保険がかけてあるから実害はない。俺たちが金を手に出来る。簡単に出来る仕事と思ったが、何事も予想通りにはいかない。
 一つの手違いが、すべてを狂わせていく。とどのつまり狂ったように人を殺していく兄。オープニングの官能、裸の男と女のセックス・シーンは必要であったのか? いくら考えても別の方法があったように思えてならない。フィリップ・シーモア・ホフマンのやや小太りの中年男の体とマリサ・トメイのほっそりとして魅力的な姿態の夫婦の交合。
 観る方はニヤニヤ笑いで楽しめるが、よく言われるのが、小説でも映画でも出だしの数行、数分が読者や観客をひきつける。だとしても何もポルノっぽい映像にする必要もない。 何故か? 私の確信に近い推測は、シドニー・ルメットの80歳を超えた年齢にある。この年齢は、死の影に怯える年齢といえる。私事で恐縮ではあるが、先だって市の健康診断を受けた。例年受けているものだが、今回肺がんの疑いがあるということで精密検査を受けた。結果は異常がなかったが、このとき何故か非常に不安だった。実は20年ほど前、大腸がんの疑いがあって内視鏡の摘出を受けているが、その時には不安は一切なかった。何故だろうと考えてみると、やはり年齢にあった。
 私も時々死の影の恐怖に襲われる。人間年を重ねる毎に生と性に執着が強くなっていくのが分かる。これが宿命なのだろう。
 シドニー・ルメットは社会派の映画監督として鳴らした人であったが、この作品に思いのたけを込めた様に思えてならない。映画は、空虚な余韻を残して終わる。
 監督シドニー・ルメット1924年フィラデルフィア生まれ。‘57「十二人の怒れる男」が大ヒット。この映画、私の子供たちが小学生のころテレビで放映したのを観ていた時、最後は感動したと言ったのが印象に残っている。それほど訴えるものがあった。
 フィリップ・シーモア・ホフマン1967年ニューヨーク州フェアポート生まれ。「カポーティ」でアカデミー主演男優賞受賞イーサン・ホーク1970年テキサス州オースティン生まれ。’01「トレーニング・デイ」でアカデミー助演男優賞ノミネート。
 マリサ・トメイ1964年ニューヨーク市ブルックリン生まれ。‘92「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を受賞。私の好きな女優の一人。
 アルバート・フィニー1936年イングランド、モンチェスター生まれ。’00「エリン・ブロコビッチ」でアカデミー助演男優賞ノミネート。
       
       イーサン・ホークとフィリップ・シーモア・ホフマン       
       
       マリサ・トメイ
       
       
       父親役のアルバート・フィニー
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