延々と続く拷問の映画である。アメリカの3ケ所に核時限爆弾を仕掛けたと自ら語るビデオを送ってきた。そして残された時間は4日間だと言う。その男アーサー・ヤンガー(マイケル・シーン)は、ショッピング・モールで長時間ただじっと突っ立っていて逮捕された。
FBIのブロディ主任捜査官(キャリー=アン・モス)指揮のチームは、尋問のため陸軍兵舎に向かう。そこで知らされたのは、政権の指示でCIAの尋問専門官が仕切ると言うことだった。その尋問官はH(サミュエル・L・ジャクソン)と言う。
外からも見えるようになっている尋問室で、Hはいきなりヤンガーの小指を斧で叩き切る。悲鳴にも似た抗議がブロディからあがる。時間との勝負という極限状態の打開は容易ではない。宗教的に自分の信念を固め死を覚悟したハンガーの意思は盤石だった。ヤンガーの妻をつれて来て自白の糸口を探したが無駄だった。しかも、Hは面前で妻の喉を掻き切る。
Hも睡眠をとらず心底疲れ切っている。最後に持ち出してきたのが、ヤンガーの子供たちだった。ようやくヤンガーは、ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴの都市と場所を白状する。しかし、Hは言う。「そいつはまだ本当のことを言っていない。四つ目がある筈だ。盗まれたプルトニュウムの分量から爆弾は4個ある筈だ」
映画はこの謎を残したまま終わる。そして拷問を否定も肯定もしていない。確かに、核爆弾で失われる1000万人の人命を助けるための引き換えに拷問を容認する意見もあるだろう。誰一人正しい答えを持っていない。もともと核爆弾を作ったのがアメリカで、そのアメリカが核で脅されるという皮肉は、映画とはいえ愚かなこととしか思えない。この映画でも最後に政府高官が、「今日のことは機密だ」という。そういう隠蔽しか手段がないのも不幸なことだろう。
このDVDには、監督解説の特典映像がある。それによると、4個目があって悲惨な終わりを告げるか。この謎のままにしておくのか議論があったという。脚本家の意向を尊重して謎で終わらせたらしい。ある試写会では不満もあったようだが。
それにしても、こういう拷問に耐えられるのだろうか? その道の専門家は、固い信念と強い意思があれば耐える人間もいるということらしい。ほとんど尋問室の場面で、まるで舞台劇のようで緊迫感が途切れずに、約1時間半はあっという間だった。監督グレゴール・ジョーダンは、この映画はスリラーだという。
監督
グレゴール・ジョーダン1966年オーストラリア生まれ。
キャスト
サミュエル・L・ジャクソン1948年12月ワシントンDC生まれ。
キャリー=アン・モス カナダ、バンクーバー生まれ。
マイケル・シーン1969年2月イギリス、ウェールズ生まれ。’06「クイーン」で当時のイギリス首相ブレアーを熱演し高い評価を受けたという。